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第32話
「みずき?嫌じゃないよな、嫌だったらやめるけど?」
そっと聞いてみるアキラ。
「あぁ、嫌じゃないよ」
「ホラ、みずきも言ってるじゃん」
みずきの答えを聞いて、ガクッと脱力し、みずきっと呼んでしまうヨシ。
「ヨシは、もう帰れよ。話終わっただろ、お前いるとお前とばっか話して、みずきと話できねーだろ」
「な、勝手にすればいいだろッ!話かけてんのはそっちなんだよ!」
自分のせいにされ、帰れとまで言われ怒りっぱなしのヨシ。
「あっそ、みずき今日うちに寄って帰らねぇ?新しいPC入ったんだ、使わせてやるよ」
ヨシを無視して、アキラはみずきに話かける。
「へぇ…」
アキラの言葉に耳を傾けるみずき。
「まぁ、あまり変わりないけど、使ってみたいだろ」
「ありがとう。そうだな、今日はまだ仕事が…」
返事しながら、みずきは…
(明日の昼頃に行くよ、今日行くと、ヨシがついて来そうだからな…)
そうアキラの耳もとでポソポソ話す。
「確かになぁ」
アキラは片手で軽く口元を抑え、クスクス笑う。
「なんだよっ!何が可笑しいんだ!アヤシイぞっお前らッ!!」
笑われて、不愉快になるヨシ。
アキラの仕種や立ち位置が、まるで女のようで、みずきとアキラが恋人同士に見えてしまうのが、無性に腹が立つ。
「別にヨシには関係ねぇし、迷惑かけてねぇだろ!」
以然、みずきの腕に掴まったまま、平然と言うアキラ。
ヨシは怒って…
「大アリだっ!目障りなんだよっ離れろッ!!」
バッと二人の前に来て、軽く離すつもりでアキラの腕を引いたヨシ。
しかし、アキラは…
フラッとそのまま体勢を崩し、その場に倒れ込む。
「お、おい!?」
あまりに簡単に倒れたアキラに驚くヨシだが…
「アキラ!」
みずきがすかさずかけ寄り、アキラを起こす。
「ってーな!何すんだよ、大ボケっ!!」
すぐにヨシに向かって怒ってくるアキラ。
「か、勝手にテメーが転んだんだろっ」
反射的に言い返すヨシだが…
「ヨシ!今のは、お前が悪いだろう。謝るんだ」
ヨシの言葉を制して、みずきが少し怒って言う。
それが、とても恐くてヨシはおとなしく謝る。
「わ、悪い…、だってよォ、まさか倒れるとは思わなかったんだよ」
おずおずと、言いワケをするヨシ。
アキラは…
「…もういいよ、帰ろ…みずき。家もうすぐじゃん」
起き上がり、服をはらいながら、みずきのアパートを指して一人歩き出す。
みずきは、ふっとヨシにも視線を送るが、そのままアキラと並んで歩く。
そして、アキラの細い手をとり、手をつなぐ…
「いいのか?ヨシ、オレとみずきが仲よくしてると怒るぞ、みずき取られるの嫌なんじゃねーの?」
そっと気づいて静かに聞いてみる。
「俺が言うよ、俺のエゴなんだから」
ぽつりと答えるみずき。
「そんなコトねぇよ」
アキラも軽く笑って言う。
「…ヨシ」
みずきは振りかえり、ヨシを呼ぶ。
みずきからアキラに手をつなぐのを見て、複雑な気持ちになり、一人その場に立ちつくしていたヨシ。
「…みずき」
低く呟いてしまう。
みずきはヨシに向い話しはじめる。
「ヨシ、俺は…アキラの事が好きなんだ、愛している」
ストレートに自分の想いを言うみずき。
アキラも手を繋がれたまま隣で聞いている。
「なっ、何言ってんだよ!アキラはっ」
まっすぐ、みずきに見られて言葉が続かないヨシ。
(なんだよ…それ)
「お前には嘘をつきたくないから言う、ずっと前からアキラの事は好きだった。でも、伝える事ができずにいた」
みずきは、静かに説明を続ける。
「…二人きりになって、告白した俺の気持ちをアキラは受けとめてくれたんだ。これは俺が一方的に言ってる事で、アキラは気を遣っているだけだから、怒るなら俺にしろよ」
そう、アキラを気遣いつつ伝える。
「なんだよそれッ!だまされてんだよ、みずきはッ!」
カッとなってみずきに怒鳴る。
「俺は、だまされていない、この想いは本物だ」
みずきはヨシの瞳を捕らえ、真剣に伝える。
「……あっそ!じゃ勝手にすりゃいいさ!…でもッあとで後悔するのはみずきなんだからなッ!」
ヨシはそれだけキツく言って、反対に向いて歩いて行く。
みずきは去っていくヨシに言葉を投げる。
「ヨシ!俺は後悔なんかしていない、幸せなんだ、今が…」
ヨシはそれを聞かないふりで歩き続けていく。
みずきは…ふうっ、と溜息をついて…
「帰ろうか」
アキラを促すみずき。
「言わない方が良かったんじゃないのか?」
みずきに手をひかれつつ聞くアキラ。
「いや、俺が言いたかったんだ。ヨシには知っていてほしい俺の気持ち、あいつとは昔からの付き合いだから」
そう、やさしく言葉にする。
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