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第33話

「…そうだな」 みずきの言葉に傾いたアキラだが、心では違う事を考えていた。 ……オレは、ヨシにとって心の支えのみずきを…オレのわがままで、騙して、奪っているのかもしれないな… 恋愛感情もなく、ただの甘えだけで付き合い続けて、本当にいいんだろうか…… 「アキラ!?」 「え、あ、何?悪りィ、オレぼーっとしてた」 急に呼ばれた感覚に驚き、思考が途切れる。 何度か呼んだあと、やっと気付いたアキラにみずきは… 「お前は何も考えないでいい、考えないでくれ」 とても悲しそうな目をしていたアキラ… 何を考えているのかまでは解らない、でも、自分をおいつめている顔だった。 そんなコトは考えて欲しくない… すっと繋いでいる手を離し、アキラの肩を抱き寄せるみずき。 その動きに、クスっと笑うアキラ。 「大丈夫だぜ、そんなに不安にならなくても、オレのコトが信じらんねぇ?」 意地悪な事を言う。 「いや、そんな事は……」 ないとは言いきれないみずき。 アキラは自分で決めて、自分だけで歩いてしまう事があるから… 「みずき、人を好きになるって、恐い事ばかりだろ…」 軽く笑ってアキラは続ける。 「いつ嫌われるか、いつまで一緒に居れるか、自分の事をどう思ってるのか…不安ばっかり増えてしまう。オレと一緒にいると不安だろ?……疲れたら、やめてもいいからな」 みずきに寄り添いながらそんなコトを言う。 「何を、なぜそんな事を言う?」 はっとして問う。 「オレさ、この世で一番オレ自身が信じられない、だからオレを信じろなんて言葉は言わない。信じて欲しいとも思わない。…みずき、オレが考えちゃいけないなら、みずきが考えて欲しい。本当に今のままでいいのか?」 アキラの言葉に真剣に聞きかえす。 「今のまま?」 「オレはみずきのそばにずっと居てやるワケにはいかない…オレは後、数年で死んでしまうかもしれないんだから」 アキラが、その言葉を言った途端… 「やめろっそんな事はない、アキラは生きると言ったんだ!死なせはしないっ!」 バッと頭を強く振って否定するみずき。 「…みずき」 「違う!」 「みずき、聞くんだ!」 アキラは息をついて話だす。 「みずきは解ってない、オレは確かに生きぬくと言ったけど、それにも限界があるし、オレ自身、本当はいつまで生きれるかわからないんだ」 みずきに口をはさませず、続けて… 「今の状態のみずきは、とてもオレの死を受け入れそうにないだろ。オレの事、忘れろとまでは言わない。思い出にしてくれないか…」 そう零れる言葉… 「……どうしてそんな事を言うんだ。俺はお前以外愛せない、お前がすべてなんだ!」 必死に頼むようなみずきの姿に、アキラは言葉に詰まり… 「……悪りィ、みずき。ちょっと不安にさせてみただけだよ…そこまで思ってくれてんならイイんだ、ありがとな」 みずきを安心させようと、心に思っている事を伝えるのをやめる。 笑顔を作り、みずきが自然と離れていくまで待つことにする。 「アキラ…」 その表情を見て、みずきは少し安心したように息をつく…。 「ん、」 アキラは軽く頷く。 もうみずきのアパートに着いて、部屋のドアの前だ。 アキラはみずきの顔に指を触れさせる。 みずきはそのアキラの指に触れ、そして、頬に片手で触れて、アキラの唇を親指でそっとなぞる。 知ったタイミングで瞳を閉じ、静かに唇を重ねる。 やさしいソフトキス…嫌な事は忘れさせてくれる。 静かに離れ、そして、愛しく抱きしめる。 「…今日、家に来ない?」 抱きしめられたまま聞くアキラ。 「あぁ、明日、行くよ」 抱きしめた手を放しながら答える。 「わかった、じゃ、また明日な!」 「あぁ…」 軽く手を振って帰るアキラを優しい眼差しで見送るみずき。 アキラの姿が見えなくなったとこでアパートの中に消える。 アキラは、静かに歩いて数分の距離の自宅を目指す。 すぐ、後ろから呼び止められるアキラ。 「おいッ!みずきと何話してたんだよ!」 「え、なッ、ヨシ?帰ったんじゃなかったのか!」 二人の様子を遠くから一部始終見ていたヨシが問いつめてくる。 「帰るかッボケっ!みずきと何話してたんだよッ」 2人の様子が気になって帰れなかったヨシ…問い詰める。 「うるさいっ!カンケーねぇだろッ教えるかっ!」 無視して歩き続ける。 「お前は何考えてんだ!ルードはどうしたんだよッ」 意地でもついていくヨシ。 「……」 「おいッ!」 答えないアキラを大声で呼ぶ。 「うるせーなっルードは出て行ったんだよッ!」 「ハン!フラれてキラわれたのか?ばっかでぇ!」 「ウルサイっ!」 ヨシと話したくなくて、少し早足になるアキラ。

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