34 / 213
第34話
「ふーん、お前はそれで、寂しいのを紛らわすためにみずきを利用してんだろーがっ!自分を可哀相に見せて同情ひいて、じゃねぇとみずきが動くハズねぇ!!」
カガッとしゃべりまくる。
「汚ねぇ奴!それでルードが戻って来たら、お前はみずきをジャマ者にするに違いねぇ!その顔でみずきを惑わしたんだッオマエはッ!!」
勢いで話し続けるヨシ。
アキラは、無視したいが、内容的にヨシの言う事が心をツラぬいていく。
顔を下へ向けて、歩き続けるアキラ。
「ルードに嫌われたからって、すぐみずきに乗り換えるなんか、どーかしてるぜッ!本当にみずきの気持ち考えてんのか!?サイテーだぜオマエ、みずきの人生潰してんだぞッ!ワカってんのかっ?」
それでも止まらず話続ける。
アキラは唇を噛み…
「わかってる、わかってんだよッそれでもッ、少しぐらい人に甘えて、愛されて生きたって…いいじゃな、いかッ…」
アキラの瞳から涙の雫がこぼれ落ちていく。
涙で声を詰まらせる。
(…イイワケナイダロ…オマエハ…)
心に反復して聞こえる声。
そんなアキラの様子を見て驚いてしまうヨシ。
「アキラ?」
すっと肩に触れようとしたが、アキラは避けながら。
「さわんなッ!帰れよッもォッ!」
涙を振りきるように早足で行こうとする。
それをさらに止めようとしたヨシだが、それを振り払うように不意にタッと駆けだすアキラ。
タイミングを外して2、3歩でて、手を伸ばしアキラの服を捕らえる。
それと同時に、アキラの両足にズキッと重い痛みがはしり、そのままガクッと体勢を崩す。
「ぁッ!痛ッ…」
「なッどうし…?」
いきなり倒れこまれて何事かと驚く。
「っく…そッ!」
苦し気に呼吸するアキラ。
(こんなちょっとの距離も走れないのか…オレはッ!)
もう、走るための踏切でさえ足が麻痺してしまう自分…
後ろポケットに入れてある薬をサッと口へ流し込む。
「なんだよッどうしたんだ!?」
「ッお前は…帰れッ」
顔に一筋の汗を浮かべながら、道の端に足を抱えるようにして座り、痛みを堪えて言うアキラ。
「帰れったって…」
ヨシは、ぼう然と見ていることしかできない。
頭を下げて動かないアキラ…
なにもできないまま、5分ほど経った頃…
アキラのツっていた足も緩和してくる。
アキラは軽くマッサージをしながら立ち上がる。
「お、おい…」
困惑しつつ、低い声で、窺うように聞くが…
まだ少し足をさすっているアキラ。
「はぁ、帰れっつってんだろ!何でついてきてんだよ!」
ぐいっと汗を拭い、いつもの調子で答える。
「なッてめーなぁ、急にコケやがって、俺のせいかと思ったんだよッ!!ボケッ!」
「オメーのせいだよバカッ!帰れっつてんのに何回言えば分かるんだ」
「な、なんだよッその言い方はッ!ムカツクなぁ!」
ヨシが言い返そうとしたその時、進行方向の路地から、不良グループか、若い男子5、6人がバイクに乗って飛びだしてきた。
アキラのすぐ横を囃し立てるように声を出し通り過ぎてゆく。
そして、一番最後の奴が何かを投げつけて来た。
反射的に、アキラをかばうヨシ。
「っ危ねぇんだよッ!…痛ッ」
そしらぬ顔で通り過ぎていく奴に、一声怒鳴るが…
左肩に刺すような痛みがはしり、その場所を手で押させるヨシ。
見ると、Tシャツが破れて、じわっと血が滲んで出てくる。
その事に気付き、アキラは…
「ちょっと見せてみろ、いいから!!」
ヨシは、なかば強引に腕を取られる。
「痛いなっ!触るなよッ!」
怒るヨシだが…
「これぐらい我慢しろッ」
逆に怒られる。
アキラは、やりにくい肩でも手際よく布で、直接圧迫止血する。
「……」
「原因はコレだな…」
アキラが拾い上げたものは茶色い古びた木片だった。
「かぁーっ!危ねぇなアイツらッ!なんでこんなモン!?」
「さぁ?ちょっとお前、うち寄って帰れよ。トゲが刺さってる、取って消毒してやるから」
「べ、別にいらねぇよ」
有無をいわせぬ口調で言うアキラに反発し言うヨシ。
「あっそ、いーんなら、無理には言わねーケド」
どーでもいいように言われてヨシはムッとなって言い返す。
「ならしろよ!手当っ」
「ふ、」
その様子に、アキラは軽く笑い歩きだす。
家の裏口の門まで来て…
「向こうむいてな!」
ヨシに言うアキラ。
「なんで?」
「お前にセキュリティナンバー教えるワケにはいかないからな」
ヨシの問いに、もっともな説明をする。
ともだちにシェアしよう!