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第35話
「別にいいじゃねぇか、みずきは知ってるんだろ!」
「知ってるケド、お前はダメ!ほら、向こう、あの家がルードの実家」
アキラの言葉にひかれ、そちらに気をとられている間にロックを解除するアキラ。
「ほら!早く入れっ!」
「え?もう開いたのか!」
驚き不満ながらもアキラに付いていく。
入ってすぐに、二匹の犬がお出迎え。
「ただいま、メアリー、リッツ、よしよし」
アキラは犬の背を撫でている。
「うわっ!びっくりしたっ!」
いきなり犬に飛びつかれ、うろたえる。
「リッツ!そいつに近づいたら蹴られるぞ!」
「なっ!蹴るわけねぇだろッ!」
怒るヨシを無視して、アキラは…
「後でメシやるからな、待ってな」
犬にはやさしく言い、ヨシには冷たく…
「早く来い!」
と言う。
「はいはい、バイバイ~っ!」
一応答えて、犬にバイバイしてアキラについていくヨシ。
大きな玄関のドアにもロックがかけてあるが、これはカードキーで開くらしい。
すっとカードを通して家の中へ入るアキラ。
玄関もかなり広い。
「そこ座ってて!」
そう言うと奥へ入って行くアキラ。
「なんだよ!上げてくれねぇの?」
ヨシは文句を言い玄関になぜか置いてある椅子に座る。
玄関から部屋の中を見わたすヨシ。
壁には西洋風絵画がかかっている。
(あれもやっぱ、ん百万はするんだろーぜ)
心でケッとなりながら、ふとある事に気付く。
(…静か過ぎねぇ?)
アキラは救急箱のような物を持ってヨシの元に戻ってくる。
「なぁ、この家、お前以外いねぇの?」
なにげに聞いてみる。
「あぁ、いつものコトだ」
気にする風もなく、軽く答える。
「家政婦とかいるだろ、フツー金持ちは」
なおもつっこむヨシ。
「いたよ、ガキの頃は、でも、もう自分の事は自分で出来るからな、必要なくなったんだ。金かかるし」
「そんなもんかぁ?」
首をかしげるヨシだが、アキラは無視して、止血した布をとる。
「早く服脱げよ、手当できねぇだろ!」
不機嫌に言うアキラにヨシは。
「ぬ、脱ぐ…」
その言葉だけに反応する。
「バカか、変な事考えんなよ!早くしないと服破くぞッ!」
「わかってるっつーの!ムキになるな、アホっ!」
ヨシは笑いながらバカにする。
「てめー、それ以上オレを怒らせたらどうなるか」
アキラはトゲ抜き用のハサミをシャキーンとさせながら言う。
「わ、わかった!おとなしくする」
恐怖を感じて、たじっとなるヨシ。
Tシャツを脱いでおとなしく待つ事にする。
なかなかイイ身体つきのヨシだが、アキラは傷の方に集中している。
ふと笑ってアキラは…
「トゲいっぱい刺さってるぞ~っ見ろよ」
そう、傷口をガーゼでつつく。
「いてーッってんだろ!早く抜けよトゲッ!!」
顔を向こうにむけて怒る。
「しょうがねーなぁ、動くなよ!」
アキラは言い、ガーゼと器具を持ち、抜きはじめる。
相当痛いのを覚悟したヨシだが、アキラは1本2本と、手際よくトゲを取り除く。
「…オマエさぁ、大学いかねぇと医者になれねぇんじゃねーの?」
アキラを見て聞く。
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