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第37話《不均等な三人》
10月半ばのよく晴れた日。
数分前からアキラはみずき宅にいる。
どうしてもみずきと遊びに行きたいらしいヨシがその後もテーマパークに誘っていたらしく、みずきは、以前話した時と同様、アキラも行かないかと誘ってきていた。
ヨシとは微妙に険悪状態となっていたので、一緒に行きたくなくて断っていたのだが、あまり一人で外出できないアキラは、やはり行きたい気持ちもあって流される形で遊びに行くことを了承したのだ。
現在ヨシが車で迎えに来るのを待っている状態。
「やっぱ、行くのやめようかな…」
ぽつりと呟くアキラ…
「アキラ…前は行きたがっていたのになぜ?」
「ヨシがいるし…タダ券もらうのも借り作るみたいで…なんかな」
結局、ルードの居場所が分からず、他に誘う人も決まらず、タダ券が余った為みずきの勧めでアキラが使うことになったのだ。
アキラはそれも納得できない様子。
「余っているのだから使えばいい」
「うーん」
「本当に嫌なら…行かなくていい、けれどせっかくの機会だから…」
「…ん」
行きたくないわけじゃないけど…
そうこうしていると、アパートの戸がノックされ、聞きなれた声がする。
「おーい!みずき!」
迎えに来たヨシ…みずきを呼ぶ。
「ああ、すまない…あがるか?」
「いーや、車そこ置いてるからすぐ出て来いよ」
「あぁ。…アキラ」
みずきはアキラに手を伸ばし、窺うように呼ぶ。
「…早く来いよ!」
アキラの顔を見て、少しムッとするヨシだが、そのまま車へ戻る。
「……」
「アキラ…?」
「うん」
アキラは頷いてみずきに手を引かれながらヨシの車の前までくる。
「さ、いこうか」
後部座席のドアを開け、アキラを乗るように促すみずき。
しかし、アキラは俯いてなかなか動かない。
「さっさと乗れよ」
ヨシが痺れを切らしてアキラに言う。
「…昼飯、オレ奢るから、チケット代の代わりに…」
不意にアキラはそんなこと言う…
「え?マジ?ラッキー」
特に何も考えずに喜ぶヨシ。
「アキラ…」
「つか、早く乗れって」
そう促す。
「あぁ…」
みずきはアキラを促すように、後部座席へ先に乗せながら、みずきもその隣に座る。
そんなみずきの様子を見て、面白くなさそうな顔をするヨシだが、無料券のある遊園地へと車を走らせる。
「へぇ…こうなってたんだ」
園内に入園して周りを見回しながら呟くアキラ…
遊園地に来るのは、健次が一度だけ連れて行ってくれた小3以来、年齢を増すと感じ方も変わってくる。
「アキラ…」
みずきは遠慮がちにアキラに手を伸ばす。
「うん」
その手を取りながら、微笑んでみずきについていく。
「おい!こっち!!まずは絶叫系だよな~!!」
ヨシは既にテンションが上がっていて楽しそうに二人を呼ぶ。
そんなヨシに二人はついていきながら…
「オレ、絶叫系はいいから、お前らで乗ってこいよ」
無意識に力を入れてしまって身体が麻痺してもいけないから…
そう断るアキラ。
「はは、怖ぇーのか?」
からかうように言うヨシ。
「違う、乗りたいけど…でもオレは乗れないんだよ」
「なんで?」
そう突っ込むヨシだが…
「アキラ、俺もいいから…」
みずきも、アキラが乗らないなら…と、言葉を出すが…
「え!?乗ろうぜ、みずき!」
「みずきはオレに遠慮しなくていいから乗ってこいよ」
「いや…」
「んで、感想聞かせて、な」
そっとみずきに触れながら首をかしげて言うアキラ…
「あ、あぁ…」
そんな可愛いアキラの仕草にドキっとしてしまうみずき。
「……」
アキラに優しい瞳を向けるみずきを見て…言葉が出ないヨシ…
本心は、アキラに、みずきを誘惑しやがって…近づくな!と言いたいけれど…
ぐっと我慢する。
「乗るのか?」
みずきは黙ったままのヨシを促すように言葉をかける。
「…あぁ、行こうぜ!お前はカメラ係!」
体良く、みずきとアキラを引き離すため仕事を与える。
「えー?」
カメラを渡され少し難色を示すが…
「うまく撮れよ」
カメラを渡しながらそう付け足すヨシ。
「はいはい」
仕方なく頷くアキラ。
「じゃ…行ってくる」
そうアキラに優しく囁くみずき。
「おう、いってらっしゃい」
軽く手を振って見送る。
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