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第41話

「あぁ、おまえの弟が入れてくれた」 「そ、か…」 手を握られていることに気付いて、そのまま自分の首にみずきの手を当てるアキラ。 (熱い…) 心で思うみずき。 「んー、みずきの手、冷たくて気持ちがいい…」 マスクごしに、かすれた声で言い、かすかに微笑む。 「アキラ…熱が…」 かなり高い様子のアキラ…心配して言うみずきだが… 「ふ、みずきの手が冷たいから熱高く思うんだよ…そう高くないから」 微笑しながらみずきの言葉を制して言う。 「…これ、弟が…」 白い紙をアキラに渡す。 「…ふふっ」 手紙の内容を読んでも少し笑うだけ… 「アキラ」 「読んだ、よな?」 窺うように名前を呼ぶみずきに、すぐ尋ねるアキラ。 「……あぁ」 「聞きたいんだろ、何でメシ食わねぇのかとか?」 「あぁ、なんでちゃんと食べない?」 心配して聞くみずきにアキラは… 「教えねぇー」 酸素マスクを取りべーと舌を出す。 「アキラ…」 茶化すアキラを見て、困ってしまうみずき。 「うそうそ、ただ面倒になっただけ、自分で自分一人の食事作るのがさ、1日3食分も作る気しねーんだよ…」 アキラは、またみずきをからかうように笑って軽く言う。 「…アキラでも、それでは…」 「わかってるって、今度からちゃんと作って食うから、心配すんなって。イイよなぁ、みずきはインスタント食品でも食えるから、オレは添加物たくさん取っても身体に悪いからさぁ、できるだけ自分で作らないとダメなんだ…」 やれやれといった感じで言いながら起き上がろうとする…が、フッと止まるアキラ。 「まだ、起きない方がいい」 みずきが心配して言うが… 確かに身体もだるいアキラだが、みずきの前で見せない方がいい自分を思い出して…服が帰ってきた時のままだ。 ぱたっと布団に逆戻り… 「みずき、喉かわいたからお茶作ってきて、ついでに氷枕も、キッチンの下の戸棚にあるからさー」 少し考えて不意に、お願いする。 「わかった、おとなしく寝ていろよ」 「おーけい」 頼られるのは嬉しいのでアキラの返事を確認して、すぐ作りに行くみずき。 アキラはみずきの足音が遠くなったのを確認してスッと起き上がる。 「……着替えよ」 ぽそっと呟いてアキラは、下着を着替えはじめる。 素早く着ているものを脱ぎ隠し、キレイなものへと着替えるアキラ。 (…別に、こんな事しなくてもイイよな…でも、言ったらみずきはキズつくだろーし…?わかんねぇけど) 自問しつつコウジの手紙を机の中に片付け… (ふぅ、後はみずきが酒のコト思い出さない事を願うだけ…) 急に動いて、フラフラする頭を振ってベッドに戻るアキラ。 「はー…疲れた」 (でも言ってもイイよな…オレ悪いワケじゃなし、言わないと隠し事してるって…まぁどっちでもいいか…) 独り言を呟きながら考えていたが、だるくなってやめてしまう。 しばらくして、みずきがお茶と氷枕を抱えて戻ってくる。 「はい、お茶…」 すっと渡してくれるコップを起き上がり受け取るアキラ。 「サンキュ…」 何気なくお茶を飲むアキラの姿が、みずきの中にひっかかっていた何かを思い出させる。 すかさず聞いてみるみずき。 「アキラ…なぜ、酒なんか飲んだ?」 静かに聞くみずきだが、アキラは… うぐッ!と、ふき出しそうになる。 (いきなりかい…) ムセながら俯いて心で思ってしまう。 「おい!しっかりしろ、大丈夫か?」 驚いて慌てて心配する。 「悪ィ…気管に入った!」 アキラはまだ少しムセている。 息をつき、続けて… 「はー、大丈夫。みずき、いつ頃来たんだ?」 すかさず話題変換。 「俺か、一時間くらい前だ…」 「そうだったのか…悪かったな、オレ寝てたから…」 インターフォンも気づかなかったと謝るアキラ。 「いや…時間があったから…その、雑炊作ってみたが、食べるか?」 自信なさそうに聞いてくる。 「えっ?みずきがつくったのか?珍しい!食わねぇとソンだな、食う食う、持ってきて」 ぱっと笑顔をみせ急かす。 「あ、あぁ」 アキラの嬉しそうな顔を見て、やはり何かしてやりたくてすぐに取りにいく。 ぐつぐつと、雑炊を温めながら、また、フッと思い出す。 酒の事をアキラになんだかうまく、かわされたような気になってしまう。 言いにくいコトなのか? それとも言えないコト? …知りたい、なぜならアキラの命に関わる事だから、一人だけで苦しませはしない。 今度は聞く。 そう心に思いアキラの元へ戻る。

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