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第43話
「じゃ、言うけど、酒は自分で飲んだんじゃない…、飲まされたんだよ、知らねー男に…」
「なッ…!!」
「オレが昨日の夜、いつもの様に散歩してたら、2丁目の細道、知ってるだろ?あそこで後ろから殴られて…」
そう言いながら、後ろ髪をかき上げて、首についた内出血の跡をみせるアキラ。
「!!」
「気ィついたトコは、多分車ン中…目隠しされてたから確かかはわかんねぇケド、んで…逃げようとしたら酒、ボトルごと飲まされて、それから…。ま、みなまで言わなくてもワカルだろ…。その後公園に置き去りにされて、家に着いたのは朝になってから。飲まされた酒がアルコール濃度高くて発作が帰ってからも続いて今こういう状態。どう、満足した?これが本当のコト…」
無表情な人形のような顔で、平然と言うアキラ。
「……」
複雑な感じがはしり、唇を噛むみずき。
なんとも言えない怒り、悔しさが渦巻く…。
「オマエが知りてーつったんだからな…」
ぽそっと言い、続けて…
「まぁ、隠してるほどのコトでもねぇけどな、仕事の撮影だと思えば、なんともねぇだろ」
片手を上げ軽く言うアキラを見てみずきは…
「なんともない事なんかないッ!!俺は、いつも、おまえは…どうして、そう平然としていられる!?強姦されたんだろっ!?」
胸に抑えられなくなり、コトバにしてしまうみずき。
拳を震わせながら…
「……そう、言うなよ。オレ、みじめになるだろ…しゃーねぇじゃん…終わったコトは…」
暗く顔を伏せて、ポツリポツリと、ことばを返してくるアキラ…
(べつに、平然としてるワケじゃない…)
「オレだって、好きで襲われたわけじゃねぇんだぜ…」
息をつきながら…
胸に押し殺していた思いの端をみずきに伝える。
「…苦しい思いすんのも、痛い思いすんのも、嫌だし…。身体しか求められない自分はミジメじゃん…でも、仕方ねぇよ、そうなんだし…」
今まで見た事のないような、つらそうな顔をするアキラを見てみずきは…
「…す、すまない、そう言うつもりで言ったんじゃないんだ!ただ、頭に血がのぼって…俺は、アキラを他人に触らせたくなかったんだ、気がついて…俺は…」
出してしまった言葉を後悔しながら、慌てて言い訳のようにアキラに伝える。
「…わかってるよ。誰もみずきを責めてねぇから、謝んなよ…な」
スッと笑顔を浮かべ、よしよしと頭を撫でる。
「アキラ…」
そんなアキラを見つめ…名前を呼んでしまう。
(俺は、ひどい事を言ったのに…簡単に、許してくれる…)
そっと自分の方に、アキラを寄せて抱いてみるみずき…
他の奴には触れさせたくない。
初めて心に強く想う大切な存在。
自分の手で守っていたい。
それが、たとえ、アキラの意思にそむいても?
それは、出来ない。
安心感の中に不安がいつもあるかぎり…出来ないはずだけれど…。
「やはり、熱が高い…」
ぽつりと心配するみずき。
「どーってコトねぇよ…」
みずきに抱きしめられたまま…静かに答えるアキラ。
「他にケガはしていないか?」
「たぶんなー」
みずきに寄り添いながら答える。
みずきは、やさしく、そして真剣に言葉をだす。
「…もう、日が暮れたら、一人で外を出歩かないで欲しい…」
アキラの瞳を見つめ、頼むみずき。
「外出禁止?」
ぽつりと言葉を返しクスっと笑う。
「心配だから…お前は綺麗だから誰に狙われるかも分からない…から、俺が守ってやりたい。夜外出する時は、俺を呼んで…」
スッとアキラの髪を撫でながら言う…
「フフ、こんな事は滅多にないんだぜ、オレでも。そんなに過保護にならなくても大丈夫だケド…」
笑って答えるアキラ。
「…頼む、キズつけたくないんだ…おまえを」
スッと首すじに出来たアザへ触れながら言うみずき。
「わかったよ、どーせ、夜に外へ出る用事なんてそんなにないし、さすがにオレも昨日でこりたからな…」
「ありがとう」
アキラの言葉を聞いて安心してお礼を言ってしまう。
「そのかわり、みずき仕事ない時は散歩に付き合ってくれよな…歩けって言われてるからさ」
そう心配そうに見つめるその人に頼む。
「あぁ、もちろんだ…」
頷いてやさしい笑顔を向けるみずき。
そんなみずきを見て、アキラはぽつり。
「…みずき、ホント心配性…」
「いけないか?」
「いーや、そんなコトねぇケド…」
そんなに心配されることなんて今までになかったから…
どうしたらいいのか…対処がわからない。
心で思いながら…
すっと瞳を閉じるアキラ。
気になり綺麗なその人の名前を呼ぶみずき。
「アキラ…?」
瞳を閉じたまま…。
「みずき…今日泊まっていけよ、一人でいるのイヤなんだよ」
「あぁ、わかったよ」
(頼まれなくてもここに居たい)
アキラを見つめながら思うみずき。
アキラは…みずきに寄り添い、その人の暖かさを感じながら…
「…ねむい」
小さくつぶやく。
「寝たらいい、おやすみ…アキラ」
アキラを抱いて、背を軽くさすりながら優しく囁くみずき。
「うん。あったかい…」
そのまま、みずきの腕の中で安心したように、静に眠りだすアキラだった。
《願いの時》終
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