44 / 213

第44話《新たな出会い》

11月、はじめの日曜日。 今日はBOUSの撮影もないので、散歩のつもりでみずきの働くコンビニに向かうアキラ。 道を歩きながら思う。 ――みずきから、告白を受けてだいぶ経つ。 オレ自身、みずきがオレの事をそういう風に見ていたコトに驚いた。 けど、オレの事を本気で愛してくれてるかもしれない数少ない人だから…大切にしたい。 でも、本当は迷って焦っている。 真面目なみずきの優しさを感じるたびに… その思いはより強くなる。 本当にこのままでいいのか…? いずれ別れる時はくる… これ以上、オレがみずきに近づかないうちに別れた方がいいのかもしれない… オレには、みずきを幸せにしてやれるだけの時間が、ないのだから…。 「よ!みずきっまた来たぞっ」 いつものように棚の掃除整頓をしているみずきに明るく声をかける。 「あ、あぁ!アキラ。驚いた…」 ハッとして振り返り驚いているみずき。 普段から無愛想な面構えだが何げにコンビニのエプロンが似合っている。 「そう、毎回毎回驚くなよ、もう会いに来ねーぞ!」 「いや、その、それは困る…」 そんなことで真面目に慌てるみずきをみてクスクス笑ってしまうアキラ。 「冗談だって、本気にすんなよ」 「…アキラ」 フゥと息をつき安心するみずき。 今日は、ブルーホワイトのチェックのカッターにみどりの大きめのパーカー、Gパンとスニーカー、髪は一つにまとめて結んでいる。 私服できっちりまとまるかわいいアキラをみると、仕事の疲れなど飛んでしまえるので、来なくなると言われたら慌てる。 「アキラ、誰にも声、かけられなかったか?」 心配になり聞いてみる。 「うん、今日はゼロ人、髪くくってるし、このカッコなら女に見えないだろ」 やわらかく笑って、言ってくる。 肯定するのは難しかったが、一応頷くみずき。 アキラは普通に歩いていてもその容姿から、ナンパに会うことがあるのだ… 「みずき、今日仕事何時まで?」 「今日は5時までだ…」 アキラの問いにすぐ答える。 「そっか、あと一時間くらいあるなぁ」 困った風に顔をしかめるアキラ。 「一緒に帰れないか?」 「うーん、どうしよっかなぁ…」 考えるアキラに、割り込むように一人の女の子が入ってくる。 コンビニのエプロンをつけたバイト生だ。 女の子は、アキラを無視して…… 「鈴鹿くん、私、もう上がりますね。この票と紙が少なくなってるんで、気をつけてくださいね、後、三咲さん来るまで、レジお願いします!じゃ、お先に失礼します」 みずきににこっと笑いかけて、挨拶し、くるっと振り返りアキラには、キッと睨み目を向け、颯爽と帰っていく。 少したじっとなるアキラ。 「あぁ、お疲れ様」 そんな事には気付きもせず、みずきは挨拶を返し、レジへとまわる。 アキラも一応ついていく… そして、詰まりながら遠慮がちに聞いてみる。 「アキラ…その、待っていてくれるか?」 しかし、アキラは… 「うーん、それよりさ、みずき」 考えるように言葉を出す。 「えっ?」 何だ?と真剣に聞きかえす。 「さっきの女の人、かわいいな」 しれっと言う。 「なっ!アキラっ!!」 突然のアキラの言葉に驚き、少し顔をしかめて名前を呼んでしまうみずき。 「あの子さ、みずきの事好きなんじゃねーの?さっきからずっとオレのコト睨んでたし、オレのコト女だと思ってんのかな?」 その女子店員のことを普通に話す。 「…それがどうかしたのか?」 アキラが何を言いたいのか困惑しながら聞くみずき。 「少し髪の長さとかカンジが、オレに似てるじゃん、みずき、あのコと付き合う気ねぇの?せっかくなら女のコと付き合った方がイイと思うぞ」 何気なくそんなことを言うアキラだが… 「…アキラ、…俺がお前を好きな事は知ってるだろ、見た目が似てたって中味が全然ちがう。それに、谷吉さんは断ったから…」 珍しくアキラに少し怒りマークを飛ばしながらみずきは言う。 「へーっ告白されたのか!!なんで、もったいねぇ、断るなんて…」 アキラは悪気なくそう驚いている。 「……」 アキラのその言葉には、答えようがなくて返事ができないみずき、無言になる。 「あ、怒った?どう言って断ったんだ?」 なおも興味津々で聞く。 「他に好きな人がいると言ってだ。アキラ、俺はお前を愛してるんだから、もう、そんな事は言うな」 アキラの軽い言葉に、怒りながらも質問に答える。 「フ…困ったネ…」 ふっと目線をそらす。 「なにが?」 アキラの言葉を拾い、真剣に聞くが… アキラは、不意に外を見て… 「あ…悪りィみずき、あそこ人倒れてるから、ちょっと見てくる」 みずきの返事を待たず、早足で出ていってしまった。 見ると本当に人がうずくまってい る。 みずきは気になったが、レジをあける訳にもいかず、窓ごしに様子を見るしかできない。

ともだちにシェアしよう!