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第45話
「大丈夫ですか?」
静かに声をかけるアキラ。
「あ、きっ気にせずに、大丈夫です、持病だから…」
うずくまっている若い男は、顔を痛みに歪めている。
見ると、両足がマヒしているように見えた。
「失礼…」
アキラは膝をつき、マヒしている足を、軽くマッサージする。
「っ痛、い、いいですっ」
青年はマッサージを拒否するが…
「大丈夫ですよー」
そのまま続けるアキラ。
「…ッ」
最初は痛みが走ったが、すぐにマッサージを受けた場所が楽になり痛みが薄れる。
「…気持ちいい、ありがとうございます。あなたは、一体?」
突然、綺麗な人に話しかけられ驚きながらも…青年は質問する。
アキラは…
「筋疾患ですか?」
逆にマイペースに聞いている。
「えっ、あ、はいっあの、僕の場合は特殊で、筋神経の…あ、えっと…」
説明しづらそうに言い折れる青年を見て…
「筋伝達異常の障害?」
続けてきく。
「は、はい、なぜ知ってるんですか!?めずらしい病気なのに」
驚く男にアキラは…
「オレも同じ症状の病気だから…」
ぽつりという…。
「えッ!じ、じゃぁ」
さらに驚く青年。
「さ、立てる?」
軽く声をかける。
「あ、どうも、大丈夫デス」
アキラの肩を借りて立つ男。
しかし、青年の体重を支えきれず、今度はアキラがフラッとよろめく…。
「あ!大丈夫キミっ」
驚いて支える男。
「お、っと、わりィ…アンタ、どこの病院かかってる?」
謝りながらまたもマイペースに聞く。
「え、僕ですか?駅前の楠総合病院ですけど」
「…そっか、年いくつ?」
続けて質問のアキラ。
「22才」
「ふ、けっこう元気じゃん、ま、がんばれよ…」
そのまま行こうとするアキラを青年は…
「あ!待って」
声をかけ、その腕を掴もうとするが、力無くすり抜けてしまう。
なんとなく空しくなってしまう青年。
それに気付いて、アキラは、もう一度、青年の手を自分の腕に掴まらせて…
「何?」
そう聞く…。
そのやさしさに、つい笑顔がうかぶ青年。
「その、きみには色々聞きたいし、お礼もしたいんだ。まず、名前教えてください!」
勇気を出して話す青年だが…
「医者の家系だし、オレが助けたいから助けただけ、礼されるようなコトしてないぜ、名前くらいならいいけど、楠木晃。あんたは?」
「僕は正木優矢。くすのきあきらさんか…楠木?って病院と同じ?」
はっと何かに気付きアキラの顔をみるマサキ。
「よくわかったな…楠病院は親父の病院だ。オレにはカンケーないけどな…」
「えっ、すごいな、でも同じ病気って本当に…」
「も、寒いから帰りなよ、じゃな…」
アキラは一方的に話を終わらせて、みずきの待つコンビニへと戻ってくる。
もどかしく見ていたみずきも、一安心する。
「…病人は?」
気になりきいてみるみずきだが…
「ん?大丈夫、よくなった」
「そうか…」
それを聞いてもうかない顔のみずき。
「何?ヤキモチ?みずき」
からかうようにみずきに言う。
「……」
何も答えないでいるみずきに、アキラは…
「マサキって言う人、オレと同じ筋神経伝達マヒ持ってた…」
ぽつりと伝える。
「え?」
聞き返すみずきの声と同時に、入口がひらく…。
「あ、あの、アキラさん、お礼が…」
「あれ?来たのかー」
ノンキに答えるアキラだが、みずきは睨み目を向ける。
みずきに睨まれて、たじっとなるマサキ。
「まぁまぁ、みずき。あのな、オレは苦しそうにしてたあんたをほっとけなかっただけ、オレが勝手にやったコトだから、礼なんかいらない、ワカッタ?」
みずきをなだめながら、相手を説得するように言うアキラ。
「いや、僕、声かけてもらったのが初めてで、とても嬉しかったし、すごく楽になったから、教えていただきたくてですね」
あたふたと言葉にするマサキ。
それをじっと見ているみずき。
「だってよ、みずき、どーする?」
「…悪い奴じゃなさそうだから、好きにしたらいい。俺の許す範囲で…」
ついついその青年を牽制するように言ってしまうみずき、ぽそっとアキラに耳打ちする。
「ハンイって難しいなぁ、でもOK!」
アキラは気にすることなく、くるっとマサキの方へ向き。
「じゃぁ、さ、5時までならOK!聞きたいコトあるんだろ、向かいのカフェでなんか飲みながら話そ」
「あ、よかったです!」
にこっと笑顔になる。
マサキは…
髪が目にかかるくらい長い前髪。
色白で、ひょろ長いイメージ…
身長はアキラより10㎝以上高い。
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