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第47話
「ううん、ええよ。今はしがない絵本作家としてなんとか食うてるかな」
マサキは笑顔を向けて顔を横へ振る。
「絵本作家?すげぇな、本とか出してんの?」
「そやね、でもこの業界はなかなかシビアやけどね。兄弟のこと考えたら頑張らなおもーて」
「お前も大変だなぁ、でも、うらやましいな、兄弟多いの」
「アキラさんは、一人っ子?」
「イヤ、弟がいるよ。でも寮に入ってるけど…」
「へー、なんで?」
マサキは運ばれてきたミルクに口をつけながらなにげに聞く。
「自宅から遠いし、あの学校、生徒ほとんど寮に入ってるみたいだからな。医者になるためにがんばってる」
「そうなんや」
感心したように頷くマサキ。
「そう。マサキはいつ発病したんだ?」
軽く聞いてみるアキラ。
同じ症状を引き起こす病気でもマサキとは病気の種類が違うためつい聞いてしまう。
とくに気分を害した様子もなくアキラとの会話を楽しむ。
「はじめて発作起こったんは、15才の時やったけど、18才になってやっと病名聞いて、ハタチからや、メチャ悪うなったんは、それまでは、ちょっとのコトじゃ、発作起こらんかったんやけどな…」
丁寧に説明しているマサキ。
「そっか…」
「病名聞いた時はショックやった。なんでワイが聞いたコトもない病気にならなあかんのかって、でも…それも自分の人生やし、それが他のモンより少しハードルが高いだけやって割きらな生きてゆけんやろ、がんばらな、な!」
にこっと笑って言うマサキに連られてアキラも笑う。
「マサキってイイ事言うねー。関西弁ってオレ好きだな…素直に聞ける」
笑顔のまま答えるアキラ。
「アキラさん、素直やん」
それを聞いてアキラは首を横にふりながら。
「ぜーんぜん、めちゃくちゃヒネくれてるぜ、その証拠にオレ友達とかあんまりいねーもん、みずきは変わり者だからオレのそばにいるけど…」
ミルクをスッと飲みながら言うアキラ。
「…その、みずきさんて、アキラさんの彼氏なんですか?」
急に敬語で聞いてくるマサキ。
「は?か、彼氏?」
きょとんと見返すアキラ。
(彼氏じゃねーだろ…??男同士ってどっちも彼氏になるのかな…こう言う場合…表現の仕方が微妙…)
少し考えるアキラにマサキが付け足して言う。
「なんや、アキラさん守るみたいに恐い目しとったさかい」
それを聞いて、ようやく、待てよ?となるアキラ。
マサキは普通のひとだった…
「はっ!わかった、マサキは大きなカン違いをしている。がっかりさせたら悪ィケド、オレ、一応オトコの子だからな。言っとくけど…」
「えっ!うそやっ」
本当にうそぉ?と言う感じで驚いてるマサキ。
「ほんとう!話し方でわかんねーかな?ここまで口の悪ィ女、居ねーぞ?たぶん」
「せやけどなぁ」
まだ信じようとしないマサキをみてアキラは…
「オレ女顔だから仕方ねーけど…」
そう言いながら、アキラは不意にマサキの手を取り、自分の胸のあたりに触れさせる。
「わっ!な、なっ何すんのや!!」
マサキは、かなりびっくりして、席を立ち手を引く…
「な、胸ないだろ、オレは男なんだよ」
しれっというアキラ。
「ッ……」
コトバが出ない。
(そんなん、驚いてわからんかったわっ)
心で叫ぶマサキだが、店員に見られ静かに座る。
触った右手は服の感触しかなかったが、思い出すと、カァ…と赤くなり頭を抱えるマサキ。
「大丈夫か?悪かったよ!信じねぇからさ、お前が…」
「下よりはいいだろ?」
アキラは、からかうように続けて言ってみる。
「わ、わかった!信じます。信じます」
唱えるようにうなづくマサキ。
「ふっ…おもしれー!それにしても免疫ないなぁ、オレ男なのに…」
「…なんでそんなに髪のばしてるんですか?」
肩より少し長く綺麗に伸びた栗色の髪をみてマサキは問う。
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