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第49話《偽りのキモチ》

肌寒くなってきた11月の終わり頃。 みずきは、仕事が休みなのでいつものようにアキラの家に向かっていた。 土曜日だが、アキラは今日は一日外出しないからいつでも来い、と言っていたから… 家の前に着くと… 「あ…み、みずきさん、おはようです」 裏門の前でハチあわせした二人。 最近出入りしはじめた、マサキというアキラの友達…らしい。 「…あぁ」 みずきは少し気に食わないが、一応あいさつをする。 「…アキラさんいないみたいですよ」 だしぬけにマサキは言う。 「いない?そんなハズはないだろう」 アキラは今日、家にいると言っていた。 外出はしないはずだ。 アキラの身に何か…、発作でもあったんじゃ… 直感で思い、心配になるみずき。 「でも、インターホン何回押しても…あ、」 マサキの言葉を途中に、みずきは教えてもらっていた暗証コードで門のロックを解除して中に入っていく。 「勝手に入って大丈夫かな?」 呟くマサキをよそに、みずきは玄関を目指す。 「……」 マサキも首をかしげながらみずきについていく。 そんなマサキを構っている余裕がないみずきは先に進む。 居ると言っていたアキラがいない… それだけで、なにか胸騒ぎが… 声をかけながら家の中に入ってみるが、1Fにアキラがいるような気配はない。 エレベータを使って2人は、アキラの部屋へ…。 「アキラ?」 みずきが呼ぶが、部屋の中はガラーンとしている。 アキラの姿が見えないだけで、異様に不安になるみずき。 「アキラ!」 3Fのベランダや浴室まで、部屋を探しまわるみずき。 「どこか行ってるんじゃないですか?」 ぼそっと言うマサキ。 それも無視して探し続ける。 そんな様子を見てマサキも一応、ヘヤの外を探しだす。 みずきは、ますます不安になり、心に嫌な感じがはしる。 なぜか…アキラに置いていかれたような… もう会えないような… そんな気持ちまでが押し寄せてくる。 (たいした事じゃない…、きっと弟とでも出掛けているんだろう) そう思いたい。 でも、嫌なんだ。 今すぐアキラの姿をみつけないと…、不安で仕方ない。 1Fも2Fの部屋も全部探したけど、アキラはいない。 あまり本気で探していないマサキは、フイに2階から下へ通じる裏階段へ目をやる。 「?…何や?」 白い粒のようなものが降り口に2.3個落ちている。 確かめようと、階段に近づくマサキ。 「……薬?」 拾い上げると錠剤のようだ…何気なく、階段の下を覗き込んだマサキ。 「っ!!」 そこにある状況に驚き、騒いでしまう。 「ア…みずきさん、はよ来て!アキラさんが大変なんやっ!!みずきさん!」 大声でみずきを呼んでしまう。 「どうした?」 ただごとじゃないのはすぐにわかった。 アキラに何が…! すぐに、マサキの元にやってくるみずき。 「アキラさんがッ階段から…」 言いながら階段の下を指さす。 「ッ!!アキラッ!!」 その光景を見て、顎然として、一瞬動けなくなるみずき… 頭の中が、まっ白になってしまう。 「ワ、ワイ、救急車呼ぶわ!」 マサキの声で、ハッと我に返るみずき。 マサキの示す先に… その場所… 階段の一番下に、転がるように倒れているアキラの姿。 頭部を切っているようで、頭からは、かなりの出血をしており、血だまりを作っている。 顔面蒼白、パッと見、生きているのかもあやうい様子に見えた… サッと階段を駆け下りて、近くに寄り、呼吸と脈をみる… いや、正確には温かさで…手や顔に触れると冷たく、冷えきっているが、首すじに手をあてると熱く、体温を感じることができる。 (…生きてる) それで少しだけ安心するみずき。 最悪な状態ではないから… しかし、これから何をしてやればいいのか分からない… こいつなら、何か出来るのに。 救急車がくる5分強の間、アキラのそばで、ただ祈っていただけのみずき。 救急隊員が駆けつけて、アキラを運んでいく。 みずきもマサキも一緒に救急車に乗り込む。 車が動きだし、隊員はアキラに軽い応急処置をしている。 みずきはふっと気になり… 「…あの、楠小児救急センターへ、行ってもらえませんか?」 ぽつりと聞く。 楠小児医療救急センターは、アキラの叔父健次がやっている病院だ。 そこの方がアキラも安心するだろうと思って…。 「あ、はい、掛かり付け病院ですか?」 「はい…」 たぶん… わからないながらも、知らない病院よりはいいと思って頷くみずき。

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