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第57話

その人物は…。 (…みずき!?) はぁ、よかった… 病院内の人じゃなくて、って良くねぇ!どーすんだこの状況! ヨシに抑えつけられ衣服も乱れたままの姿のアキラ…。 みずきと目が合うヨシヤス。 逃げずに睨み返す。 みずきは、その様子を目にとめ…何も言わず近づき、ヨシのえり元を掴みアキラから引き離し、そのままヨシを殴りつける。 手加減なしだ… 勢いよく倒れるヨシ。 「ッ痛てーなッ!」 バッと起きあがりヨシは、なんとみずきを殴り返した… そして、アキラの目の前で殴り合いが始まる…。 アキラは、一瞬、ア然としたが…乱れた服を直しつつ2人を止める。 「な…お前ら、やめろ!!ここ何処だと思ってんだ!病院だぜ!ケガ作るところじゃねぇ!!」 アキラは精一杯の声を出すが… その声に反応したのは、みずきだけだ、殴るのを止めた…。 しかし、カッとなったヨシに殴られ続けている。 「ヤメロって!くそっ」 添えつけてあるナースコールで人を呼ぶアキラ。 2人の喧嘩はなんとか医師と看護師に止められ、ヨシは手当を受けるため処置室へ… みずきは治療を拒否して、待合室に一人座っている。 アキラは病室から出て、治療用具の入った箱を持ち、みずきに話かける。 「おい!鈴鹿みずきとか言ったな…手当しないとダメだろーが…」 その声にハっと顔を上げるみずき。 「…アキラ」 ぽつりと名前を呼ぶ。 「…ま、一応助かったから礼は言うよ。でも病院で殴り合いのケンカをするのは見れねーぞ…」 少し離れてみずきの横に座る。 「…スマン」 また、頭を下げる。 「ホラ、顔出せ。そんな顔じゃ外歩けねーぞ…」 手加減なしで殴られ、だいぶ顔がはれているみずき。 「歩けなくてもいい…」 ぽつりと言う。 「ばか!子供みてーにダダこねるんじゃねーよ、健次さんに頼まれているんだから、手当させろって!」 アキラの言葉に無言で顔を上げ瞳を合わす…。 (みずき…こいつも大変だよな、せっかくイイ感じに付き合ってたオレが一日にで態度がガラっと変わっちまったんだもんな…オレも自分ながら酷い奴だ…) 考えつつ無言で手当をしているアキラ。 (バカだよな…こいつも、いくらオレが止めたからって一方的に殴られてやるコトねーのに…これじゃバイト先で笑われるぜ…) 消毒液が多少しみたのか表情に痛みが浮かぶみずき。 口の端が少し切れている。 (まったく、こいつのシュミって変わってるぜ…オレのどこが良かったんだ、ふっどこがか…オレも変わったよな、前はもっと自信があった。でも、ルードにフラれたのが一番の自信喪失だったな…身の程を知れってカンジで…) アキラは思いながら手早く手当していく。 何気なく触れるアキラの手…温かさをかみしめるみずき。 何か話せば怒らせてしまいそうで… でも、この沈黙もみずきにとってはキツイ…。 いつも会話の主はアキラだったから、アキラが話やすいように進めてくれていたから…。 (アキラ…) みずきは静かにアキラの左手を握ってしまう…熱があるのかいつも熱い手をしているアキラ。 (…みずき…) アキラも気付いて瞳を重ねる。 「なんだよ…」 一応、不信な顔で聞く。 「……」 みずきは、顔を横に振り、また手を放し、瞳をそらす。 (…それが、精一杯だよな…オレが、応えてやろうと思えば出来る。でも…) (お互いのためにも…このまま別の道をいくのがいい…) みずきからオレを振りきって欲しい… いくらオレでも、丸腰のみずきをこれ以上キズつけたくはないから… そう付け足して思うアキラ。 手当を終えて… 「…はい。これで少しはマシだからな…ちゃんと後で健次さんに謝れよ」 箱に片付けながら言うアキラ。 「…あぁ」 俯きポツリと返事するみずき。 ボーッと宙を眺めている。 (まぁ、返事してるし…こいつは大丈夫だと思う。それよりも気になるのはヨシだ、あいつ来た時から変だったし、もしバレたのなら奴をどうするか…) アキラは、すっと立ちあがりみずきを置いて行こうとするが、ガクっと手を掴まれる。 「え、何だよ!」 そんなみずきを睨む。 「どこへ…?」 行くのか聞いてくる。 「オレの勝手だろ、放せよ」 アキラの冷たい言葉を聞いて静かに手を放すみずき。 (なんだかなー、みずきってホント何考えてんのか分かりにくいよな…ま、それがこいつなんだし…) そのまま、行こうとする。 「…アキラ!」 不意にはっきりとした声で呼ぶみずき。 「あ?」 みずきに呼ばれ振り向く。 「…明日夕方6時に、隣の公園のベンチに来てくれ…大事な話がある。待ってる…」 そう瞳をあわせ真剣に言うみずき。 「な!んな事、急に言われても困るんだよ!行かねーからなッオレは」 アキラは冷たく言うが…

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