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第59話

「いっぱいあるトカ言ってたけど、もういいのか?」 「あぁ!親父の事が一番心配だったからなっ!もう、だまされようが、裏ぎられて女にフラれようが、なんとかなるカモしんねぇ!」 「はー、てめーも大変だな、ま、がんばれよ…」 そんなヨシをみてついつい応援してしまうアキラ… 「おう!」 ヨシはかなりテンション上がっていて、元気よく返事する。 「言っとくけど、絶対てめーの親父が助かるとは、一度も言ってねぇからな!」 釘をさすアキラだがヨシは… 「おう!今より良くなりゃ、少しはいいから!」 「そっか…」 ズルズルとアキラも壁に寄りかかり座る。 …この変わりよう。 くすっと笑ってしまうアキラ。 助かる可能性か…。 オレは…未知数だ。 例えあったとしても、ヨシのように喜ぶ奴もいない…そう、居てはいけないんだ。 オレには…もう、生き続けていいほどの価値がないのだから… そんなアキラの思いに気づくはずもなくヨシはアキラに話かける。 「おめー、どーするんだよ、これから…」 「何が?」 「みずきの事だよ!いくらテメーがイイ病院教えてくれたからって、俺はテメーがやってる事を許すつもりはないぜ!」 「……」 ヨシの言葉に無言のアキラ。 「おい!聞いてんのか?」 なかなか答えないアキラを急かす。 「じゃぁ!オレはどうすればいいんだよ!どうしたら納得するんだ!てめーは…」 アキラは顔を上げ逆に聞き返す。 「だから、フッてやればいいだろ、記憶喪失は全部ウソでしたって、そうしたらテメーすっげぇ嫌な奴だ、みずきも目ェ覚ますだろ、てめーの性格の悪さに…」 勢いで言いきるヨシ。 「ひでー言い方だな…」 薄く笑って呟く。 「…本当のコトだろーが…」 いつものように怒鳴り返してこないアキラを不信に思うヨシだが…。 「じゃ…そうする。…責任もってフッてやるよ…でも、それでもみずきが離れなかったら?」 ヨシを見ながらきく。 「バァカ!嫌いになるに決まってんだろ、大ウソつかれたんだぜ、俺なら嫌うぜっ!」 「もしも、だよ。一応、愛してくれてたわけだし…」 「そもそも、それが間違ってんだよな!みずきの奴をだましたんだろーが!」 ヨシもアキラの横に腰をおろしながら言う。 「だましたつもりは、オレはねーけど…」 ヨシの動きを目で追いつつ、言葉を返す。 「けっ!そうだなぁ…逆の立場で考えてみろよ、例えば一番好きな奴に絶対してほしくないコトは何だ?とか」 軽く提案するヨシ。 アキラは…首をかしげながら… 「…してほしくねぇコト?」 つぶやくように聞き返す。 「おう!考えてみろよっ!」 ヨシはそう念を押す。 「…わかった、考えとくよ」 ポツリとつぶやいて、すっと立ち上がるアキラ。 「行くのか?」 「そろそろな、あんまり病室あけてると無断外出したかと思われるし…」 「じゃ、頼むぜ、みずきの事、大大嘘つきにならないようにな!」 行こうとするアキラにそう声をかけるヨシ。 「一言多い」 それを聞き、怒ったような顔をするアキラ。 そして…なんと、右手でヨシの顔に触れ、静かに軽くキスをする。 「…!何すんだっ」 突然の行動に、びっくりするヨシ。 「嫌がらせ、テメー言う事キツすぎるぜ、それじゃ女も逃げるわ!考えてみろ、自分!」 そう言いアキラはヨシをほっておいて出ていく。 一人残されるヨシ… さっき触れたアキラの唇の感触が、まだはっきりと残っている。 病室に戻ってみるアキラ。 そこに、待っていたように健次が話かけてくる。 「アキラ、よかった。探しましたよ」 少し真剣な顔の健次。 「何?健次さん?」 健次に近づきながら聞く。 「その、先ほど、兄から電話がありました」 「…親父が?」 「…はい、その」 「オレを親父のトコへ転院させろって言ってんだろ?」 健次が言い出す前に聞く…。 「…はい。アキラ」 困ったように名を呼ぶ健次。 「オレは嫌だよ。そんな事、死にに行くようなもんだから…」 まっすぐ健次を見て答える。 理不尽な理由で…死にたくはない…。 親父が転院させる理由はただひとつ… この病気のサンプルとしてオレを検体として金で研究施設に提供して…薬の実験台にされるのがオチ。 いらなくなったら簡単に殺すだろう… そのくらいしか価値がない… そう思っているんだから…

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