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第64話
「…じゃ、私、もう帰るね」
不意に言う恵美。
「…途中まで送るよ」
立ち上がりながら言うみずきだが…。
「ううん!いい、ひとりで帰りたいから。有難う。また、コンビニでバイトとしてよろしくお願いします」
会釈してみずきに笑顔を向けてそして帰っていった…。
みずきは、明るく振る舞う恵美を痛々しく思う。
店を出て、そのまま近くにある公園のベンチにひとり座る…。
もう日が暮れてあたりは薄暗くなってきて、公園を照らす灯だけだ。
そこで頭を冷やす。
まわりには若者たちが、小集団をつくって話に花を咲かせている。
その中で、みずきの場所に一番近い男数人のグループの話が耳に入ってくる。
何気に聞いていたみずき。
「でさぁ、ナンパしようと思ったら向こうから声かけてきて、それが近くでみたらめちゃくちゃ美人。いきなりラブホに誘うんだぜぇ」
自慢話のように仲間に聞かせている。
「どうせウリ女だろ綺麗であたり前だって…」
「違うんだって…まぁ売ってるんだけど、それが女じゃなかったんだよ!」
「はぁ?ニューハーフにでも誘われたのか?」
「違うんだよな、話してみたら女言葉話さないし、親しみやすいっつーか、割り切ってるって言うかさぁ」
「でもオトコだろ、まさか相手したとか言うなよ~」
「そのまさか」
「ゲッまじかよ」
「だってあんな綺麗な奴から声かけらることなんて滅多にないんだぜ!しかも男!好奇心でてさぁ」
思い出しながら語る男。
みずきは綺麗と言う言葉に少しひっかかるが、なにげに聞いていた。
「えー、それってどんな奴なんだよ?」
「茶髪ストレート、肩まで伸ばしてて、色白でハーフっぽい、人形みたいな顔してるんだよ、んで女顔…」
その男の言う人物が、探しているその人に頭の中で重なって見える。
まさか、と頭を振って打ち消そうとする…
外見ならアキラと同じような人居たっておかしくない。
偶然の一致だ。
「で、どうだったんだ?ヤったんだろ?はじめての感想聞かせろよ」
「それがさ、相手がめちゃ慣れててさぁ、リードされたけど、思ったよりイイ!なんかハマリそうなくらい」
勢いにのって仲間に言っている男…
「オイオイやばいぜ、こいつ」
「なぁ、これから探しにいかねぇ?何回か探したんだけどそいつ同じトコには姿見せないらしくて、見つけられないんだよ!」
そう持ちかける。
「いいよ俺は…」
一人はつまらなそうに断るが…
「俺、そいつ見てみたいから賛成!行こうぜ…!」
「どーせ暇なんだからな!行くぞ」
なんだか楽しそうに言い乗り気でないひとりを引っ張って行く男二人。
「わかったから!で、探しに行くって何処に?だいたい名前知ってんのかよ!」
怒り調子で言う男だが…
「さぁ、ホテル街でもいってみる?苗字はしらねーけど名前は確か『サクヤ』だったぜ…」
その言葉にピクと反応するみずき。
…さくや?
……容姿は似ている人がいるかもと思ったが、サクヤは…BOUSの中でアキラのネームだ…。
そんなバカなと思う気持ちと、本人かもしれないという気持ちが心の中を乱す。
みずきは、居てもたってもいられず、さっきの男たちを追い、声をかけた。
「おい!さっきの奴をどこで見た!?」
アキラかもしれない違うかもしれない…
けど聞かずには居られないみずき。
急に声をかけられ驚く男たち。
「な!なんだよ?あんた」
「さっき話していたサクヤだ!」
「な、あぁ!あんたも探してんのか?」
「いいから答えろ!」
焦って声を上げる。
「な!なんだよ、居たとこは駅裏のホテル街!でももういねぇよ、たぶん」
それを聞き急いで探しにいく。
ホテル街を探しまわりながら、嘘だと信じたい気持ちでいっぱいになる。
アキラが、売春している?
見ず知らずの男に声をかけて…
なぜ?
『お前に飽きた…』
アキラの声が心を打つ。
これを信じたらアキラが、何を考えているのか分からなくなって…。
みずきは朝方まで様々に探し歩いたが、アキラらしき人は見つからなかった。
呆然となりながらも、いったん自宅へ戻ろうとするみずき。
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