66 / 213

第66話《覚悟の再会》

12月に入り寒さも厳しくなってきたある日。 アキラは街を一人歩いていた。 ある目的を達成させるために…。 服装はジーンズのズボンに、白いトレーナー、その上に軽そうなコートを羽織っているありふれた格好だ。 綺麗な色の髪は後ろでひとつにまとめて結んでいる。 一人で動きはじめて一週間、やっとルードを見つけることができた。 いつも4、5人のグループで行動して… そして、いつもきまって路地裏の空き家の前でたむろっている。 ルードは…あのままじゃ、絶対に幸せにはなれないから、せめてやり直そうと思った時に道しるべとなるように…。 ルードに渡す物を袋に詰めてコートのポケットに入れて、ルードに会いに足を進める。 恐いという思いはない…ただ、どんな別れになっても、あいつの前では涙を流さない、それだけは強く思うアキラ。 「ルード、久しぶり…」 軽く優しく話かける。 ルードは丁度、自動販売機で缶ビールを買っていた。 声を聞き、ハッと振り向いてアキラを見たルードだが、すぐ顔を顰め無視する。 アキラは…… 「話、いいか?時間とらないから…」 めげずに笑って聞く。 「話す事なんか何もねぇ!」 そう言って缶を取って行こうとするルード。 「待ッ頼む、もう…二度と来ないから」 それでも無視するルード。 「……」 「話、聞いてくれねぇと帰らない、ついて行くぜ、いいのか?」 渡すまでは帰れない…。 「好きにすれば…殺されたかったらな!」 怒るルードだが、それでもついていくアキラ。 「話し聞けって…」 無言で細い路地を2.3回奥へ入っていった所に、ルードを待っていた仲間が声をかける。 「おせーぞ!…買って来たか?」 「…これでイイんスよね」 缶ビールを渡すルード。 「オッケー、わかってんじゃん」 「オイ!それより後ろの女、お前のか?」 仲間のひとりがアキラに気付いて聞いてくる。 「違いマスよ、それに、こいつ男ッスよ」 「あーマジ?」 「ルーのダチ?」 「知らないッスよ、勝手についてきたんスから…」 顔を背けてしれっと言うルード… 「オイッチビ、何ノコノコついてきてんだ?」 アキラにケンカ口調で聞いてくる。 「…オレはルードに用があるんだ。お前らガキには用はねぇよ」 強気な態度のアキラ。 「てっめェ!誰にモノ言ってんのかわかってんだろーな!」 ムカっとなり怒鳴る若者。 「知るか、てめーらみたいなバカの事なんかな…」 負けずと言い返すアキラ。 「なッ」 怒りをあらわにする奴ら… 「オイ!ルー、こいつの事、知らねーんだな、ならどーなってもイイよな!」 怒りながらルードに聞く不良の一人。 「……」 「いいッスよ…関係ないッスから…」 視線を向けることなくシレっと言うルード。 それを聞いてもアキラはふっと笑っただけだ。 「コラッてめぇ!口の聞きかたに気をつけろッ謝れよ!オラッ」 ひとりがアキラの胸ぐらを掴み言う。 「誰が謝るか!」 以然と強気だ…。 だかそのアキラの言葉に、ドスッと拳でアキラの溝おちを一発殴る不良。 「ッ痛…ケホッ」 続けてアキラの頭を持ち上げ顔を右手で殴りつける。手加減なしだ…。 ポタ、ポタッと、アキラの口の端から鮮血が滴り落ちる…。 顔を殴った手には金属リングをはめていたので、そのせいでアキラは顔を切ってしまったのだ…。 「ッぅ…」 すぐに血を拭うアキラだが… さらに別のもうひとりが後ろからアキラを蹴飛ばす。 「まだまだぁ!なめてんじゃねーぞ、俺たちをキレさせたらどーなるか、思い知らせてやるぜッ!」 アキラを引きずり立たせ、二人がかりで暴行を加えている。 ルードはなぜか見ていられなくなり、仲間を呼んで足ばやにその場を立ち去る…。 嫌いな奴!…どうなろうが知ったコトか… ……でも、話くらい聞いてやればよかっただろうか… 俺のせいで… 心が揺れるルード。 「はじめの威勢はどーした!コラッ金くらい持ってんだろうな?」 男たちはアキラの財布に目をつける。 「オイオイ!マジかよ、8万入ってるぜ!ラッキー」 中味を確認して声を上げる奴ら。 アキラはあらかた暴行を受けて、その場に伏せている。 そして奴らは、金を全部抜き取り、何くわぬ顔で去っていく。

ともだちにシェアしよう!