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第69話

「あぁ、みずき、お前の事許せないって言ってたぜ!オマエみずきに嫌われてるから、好きにしたらいいぜ」 「フッ…ついに嫌われたか、満足?」 「あぁこれでやっと普通に戻ってくれるぜ、彼女も出来たみたいだし!」 「…彼女?」 「あぁ、仕事先の、可愛いコだったぜ?告られてたみたいだぜ?」 嬉しそうに話すヨシ。 「あぁ、あのコか…ふっ、よかったな…」 微笑をうかべるアキラ。 少しだけ、胸が痛むのは…オレが弱いせいだ。 「でも、オメーがルードにしてほしくねぇコトって、案外ふつーな、他人とやりまくるなんてよ」 「あったり前だろっ!ま、オメーに取られるのも、すっげー嫌だけどな、それすんのは鳥肌たちまくるからなぁ…」 しみじみ言うアキラを見てヨシが怒る。 「オイ!てめーは、そんなに俺の事嫌いなワケ?」 「別に、嫌いじゃねーよ、本当は、ただ気にくわないだけ」 「それを嫌いっつんだろ、ったく、そのキライな奴から服借りようとしてるのは誰なんでしょーね、貸してやんねぇぞ」 やれやれとヨシはアキラに言う。 「いーじゃん、オレ、このままじゃ金もねぇし、動けないだろ。なんなら相手になってやってもいいぜー?」 冗談ぽく言う。 「べー、オバケとねる趣味ございやせん」 ヨシも冗談口調で返す。 「ひっでー言い方!いいもーん貸してもらうまでここで疫病神してっから」 膝を抱え三角座りをしながらヨシを見上げ言うアキラ。 「そりゃ、ちょっと困る…んじゃ入れよ、外で話してても恐さが増すばかりだ」 そう、にっと笑う。 「なんだよー、人をバケモンみてーに…」 「バケモンだろ?」 からかうヨシ。 アキラは、ムッとして… 「ちがうッ」 怒りながら、よろめきつつ立ち上がるアキラを、すっと支える。 「お、めずらしー、手ェかしてくれんの?」 「おめーには借りがあるからな、一応」 「そーだったな、んじゃ服のついでに、シャワーとタオルも貸してくれよ?」 ヨシに掴まりながら頼むアキラ。 「調子にのってんじゃねぇつーの!」 「イテ」 軽く頭をたたかれる。 そして、家の中へと消える二人。 「……」 何がどうなっているのか…すぐにみずきの心は整理できなかった。 なぜ、ヨシとアキラがあんなに親しくしているのか… そして会話の内容… しばらく考えたが、みずきは直接聞くべくヨシの家のインターホンを鳴らす。 家の中では二人ともリビングに着いた所だ。 「お、誰か来た…」 コールに気付いて声を出すヨシ。 「女か?隠れてよーか?オレ」 アキラが言うが… 「ちょっと待てよー…はいはい、どちらさん?」 (彼女いねぇし、誰だろ…) 心で思いつつ戸をあける。 「っ!みずき…なんだよ?」 開いたその先に居た人物に驚くヨシだが、一応用件を聞く。 「アキラが来ているだろう…」 「アキラ?知らねぇぜ、他あたってくれよ…」 そっけなく追い返す。 「…嘘だ、なぜ嘘をつく?入って行く所を見たんだ、俺は…」 様子を見るため中に入ろうとする。 「待てよ!確かに居るさ、でも会ってどうする気だよ、裏切られたんだろ!許せないとも言ってたじゃないか、そんなヤツほっとけばイイだろーが…」 「…しかし、怪我が…」 とにかくアキラの状態が心配… そして… アキラと会うまでは帰れない… アキラの話を聞いて… 真実を知りたい… そして、自分の想いを伝えるまでは…。 「俺ンとこいるんだから、わざわざオメーが気にすることはねぇんだよ…ふっ、まぁ、どーしても見たいなら見りゃいーさ、かなりブサイクになってっからよ。上がるなよ、連れて来てやるから、待ってろ!」 そう念を押して部屋の奥へ消えていく。 「おい、アキラ…みずきの奴来やがったからオメーの顔見せてやれよ」 おもしろがるように呼ぶヨシ。 「えー、ヤダよ…もう、みずきに会いたくねぇ…」 「いいから来いって!」 無理やりアキラの手を引き連れて行く。 嫌々つれてこられて目線を合わせずナナメ下を向き、ハレている顔を見せる。 痛々しく腫れた頬… 「アキラ…」 それを見て、やはり心がズキッと痛むみずき… 血のりをまいたように服を濡らしている赤…。 「もォいいだろ…」 そう言ってまた奥へ戻ろうとするアキラ。 みずきは… 「待って、話したいんだ、アキラ!」 呼び止めるが、それをさえぎるようにヨシが立ち… 「話すことなんかねーってよ、帰った方がいいと思うぜ、俺は…ケガだって男ならあのくらい平気だろ」 みずきを制していう。 「どこが平気なんだ、あんなに血がでていて…」 「オイオイ、死ぬんじゃあるまいし、大ゲサ。アイツは俺にまかせて、も、行けよ」

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