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第70話
「帰りはしない、お前にも話があるから」
みずきはなおも引き下がらない。
「俺に?何の話…?」
「オマエがアキラを俺のそばから遠ざけようとしているんだろう」
「は?何が?」
「シラをきっても、お前、さっきの話では、お前がアキラを遊ばせているようだった…それ」
「違う!オレの意思でやった事だ、ヨシは関係ない」
みずきの言葉に割って入るアキラ。
ハッと声のする方を見るみずき。
「…アキラ」
「帰れよ…帰れッ!」
そう強く怒鳴る。
そして奥へ入って行くアキラの後ろ姿を見るみずき…
言葉がでない…
「……」
「…だとよ、バーイ、またな。みずき…」
ボウ然としているみずきを追い返し、戸を閉めるヨシ。
アキラはそのままリビングのソファに倒れ込む。
ヨシが後からやってきて…
「おまえ、よくあんなひでー事言えるなぁ、感心、感心!」
軽く言う。
「…しかたねぇだろ、あーでも言わねーと帰りそうもなかったし…どーせ悪モンなら、そのくらい言うんだよ」
それに…これ以上、みずきを見ていたくないから…
みずきを苦しめている自分がみえてきてイヤになるから…
つけたして心で思うアキラ。
そして静かに瞳を閉じる。
「あっそ、…ってオイ!そんな血だらけでソファ寝そべるんじゃねぇ、血ィつくだろ!」
「…ん…じゃ、服貸してくれよ…」
寝そべったまま、片目をあけて催促する。
「ったく、起きて待ってろよ!持ってきてやるから」
ヨシの声に片手を上げて合図を返すアキラだが、起きる気配はまったくない…
仕方なくアキラをほっておいて隣の部屋へ取りにいく。
しばらくして戻ってくるとアキラがいない。
「オイ、どこ行ったんだー?」
声をかけてみるヨシ。
「洗面所かりてるぞ、服そこに置いといて」
声のした方に行ってみると…
アキラは顔を洗ったようで、こびりついていた血がとれ、かなりマシな顔になっている。
「あぁ?何してんだ勝手に…!」
「ん?いやーオモシロイなーこれ、かわいーっ!」
見るとウチのペットのクロちゃんにリボンを結びまくって遊んでいるアキラ。
「オモシレーじゃねぇ!俺のクロ、勝手に触んなよ!」
少し怒り口調で止める。
「いーじゃん、オマエ、クロっての?フェレットだろ、こいつ。珍しい種類だな、高かったろーに…」
「まぁな、5万以上したぜ!」
アキラの言葉に自慢気に話す。
「どう?けっこう可愛いだろ」
首としっぽにリボンを結んで見せる。
「あーあ、カワイソーオトコの子なのにリボンづくしにされてよォ…」
「カワイーんだからイイんだよ。ほいっ」
フェレットをかごの中に戻して、血のついた服を脱ぎにかかる。
その様子を見ているヨシ。
「どーすんだ?その服…」
「血ィ洗ってとれなかったら、捨てといていいぜ」
「げー、もったいねぇ」
「すぐ新しいの買うから問題ねぇよ」
「そーゆう事言ってんじゃねぇって、まぁ俺には関係ねぇけどヨ」
「そーそー、人の勝手」
そう言って汚れた服を壁にもたれているヨシに投げ渡す。
「ぶッ!てオイ、俺に洗えって?」
「他に誰がいるんだよ」
平然と言うアキラ。
「自分で洗えっつーの!なんで俺が…」
不機嫌に言い返す。
「そ、なら置といてくれ、あーぁ…見てくれよコレ、オレのキレイなカラダが青アザだらけだぜ…手加減ってものをしらねー」
右手の親指をズボンにかけて、首をかしげ怪我した上半身を見せる。
「はっ!言ってろよ…バカが」
「バカじゃねぇよーだ、なっ?シャワー浴びていい?」
「ダメ!」
あっさり拒否する。
「なんでー!」
少し怒って顔をしかめる。
「別に、理由はねぇけど…」
「だったらイイじゃん!ケチ」
「ケチでけっこう!」
どうしても貸してくれそうにないヨシ。
アキラは…
「んー、じゃぁ、髪だけでも洗わせてくれよ、血ィついてるからさぁ…」
仕方なく折れる。
「まー、そこの洗面台でな」
「O.K、っていうか、フロに見せたくねーモンとか置いてんのか?それともすっげー汚いとか?」
髪を洗いながら会話する。
「ンなワケあるかよ、ただ入れるのはオレの女か気に入った奴だけなんだよ」
「ふーん、変なこだわりあるなぁ…親父みてぇ」
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