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第71話
「なんだよ、別にジジくさくねぇぞ!」
ムっとして言い返す。
「違う違う、オレの親父もフロの設計に凝っててさ、ほとんど帰んねーのに豪華な造りにしてるんだ、さっぱり考えわかんねぇ…」
「分かってもらおうなんて思ってねぇって…」
「あっそ…よし、洗えたっと…」
濡れた髪をしぼりつつ言うアキラ。
「何か言った?」
「てめー呼んでねぇよ、かけ声!」
「あーそう」
「っていうか、何でオメー、オレの事見張ってるワケ?」
壁に寄りかかり見ているヨシにアキラは嫌そうに聞く。
「いや、何やらかすか分からねぇからだよ」
「別に、勝手に物使ったりしねーって…」
「クロ触ってたじゃねーか」
「それは…ゥッケホッコホッ、ケホッケホッ!コホッ」
言い返そうとしたアキラだが、急に激しく咳こみだして、洗面台の下へ反射的にうずくまる。
息をする間もなく咳こみ続ける。
「オイ…」
少し驚いて呼ぶヨシ。
アキラはうずくまっていたが、口を抑えていた手の間から、血が床へ落ちそうになり、慌てて立ち、洗面台に両手をついて咳をする。
そして治まってきたら口の中を水ですすぐ…。
「ッ…ハァ、ケホッハッーハァ、ハッ…苦しーッ」
大きく息をつくアキラ。
その様子を見てヨシは…
「…ウチで死ぬなよ」
ポツリ。
「ハハ…この程度じゃ死なねーよ、まだ内臓出血が止まってねーんだな。何かいらないタオルとかねぇ?ヨシの服汚さねぇように…血ィついても大丈夫なやつ…」
手と洗面台を洗いつつ聞く。
さいわい、洗ったばかりの髪には、血はついていない。
「ホイ!これもーいらねぇからやる」
三枚ほどタオルを渡すヨシ。
「サンキュ」
そう言ってヨシの服を着ているアキラ。
タオル一枚を髪に巻いて二枚は手に持っている。
「このブカブカさがむかつくなぁ」
そうグチる。
長袖のヨシの服を着ると手が隠れるほどでかい…。
「くくっそれでも小さい方だぜー?おチビさん」
「ムッカー!嫌みなヤローだなッ」
ムスっとして、その部屋から出るアキラ…ヨシもついていく。
「お前、これからどーするつもりなんだ?」
「…んーと、出来れば今日ここに泊まらせて欲しいなーなんて…ダメ?」
袖を折りつつ聞くアキラ。
「…ソファでいいなら泊まっていけよ」
「マジ?ラッキー、実を言うと今からホテル探すのメンドーだったんだ、こんな顔で外出歩きたくねぇし…話わかんじゃん」
急にご機嫌になる。
「…お前さぁ、何の病気なワケ?」
ヨシは少し黙ったかと思うとそう聞いてくる。
「え?何だっていいだろ、ヨシには関係ねぇしな…」
ふっと笑って流そうとする。
「関係ねーケド知りてーんだよ、教えろよ」
「…バカ、教えられっかよ、お前なんかに」
「なんでだよ…言いにくい病気なワケ?」
「……そんなに知りたいんなら、みずきに聞けばいいだろ?知ってるからさ」
「んな、聞けるワケねぇだろ!それに教えてくれるか、みずきが」
なかなか教えないアキラにムカつきイライラしながら答える。
「だな、だからみずきには教えたんだよ。テメーは口軽いからな」
「決めつけんなよ!教えねぇと泊めてやんねーぞッ」
怒って言ってしまうヨシ。
「なにッ!さっきと言ってるコトが違うじゃんか、だから信じらんねぇって言うんだよ!」
アキラもカッとなって言い返す。
「なんだとッ」
「もォいい、帰るオレッ」
ヨシに背中を向けて歩いて行く。
「待てよッ帰るってどこへ?家か?」
アキラを追いかけながら聞く。
「…服、明日送ってやるから、じゃ…」
アキラは無視して帰ろうとする。
「待てって!なんでオメーはそんなに、ひねくれてやがるんだよッ」
パシッとアキラの手を取って、それ以上先に行かせないようにするヨシ。
「…放せよ」
「振り払って、走って逃げればいいだろ」
睨んで言うヨシ…
まるで見通しているように…
一瞬、腕に力を入れようとするアキラだが…意識を無視して、それは消えていく…
(…カラダが恐れてる…今、麻ヒを起こしたら…)
「……」
アキラは、少し下を向いたかと思うと、そのまま…ズルっと座りこむ。
「オイ?」
仕方なく手を放すヨシ。
「…そんなに知りてーの?オレの病名」
ポツリと聞く。
「あ?あぁ、知りてーとかより、隠してんのが気にいらねぇんだよ!」
「ふっ、ヨシらしいな…じゃ、教えてやってもいいけど…2つだけ絶対しないと誓えるなら…」
座ったままヨシを見上げて言うアキラ。
「二つ?どんな事だよ」
急かすように聞く。
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