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第72話

「ひとつは、オレの病気、オレが教えた以外深く調べたりしない事、もうひとつは、ルードにはオレが病気だって事言わないってこと…これを守れねぇんなら言えない」 淡々と話すアキラ。 「ルードに…?分かった、言わねぇ、絶対!だから教えろよ」 そう、さらに急かす。 じとーっとアキラはヨシを見たあと… 軽く息をついて… 「…絶対だからな、じゃ言うけど…オレの病名の正式名称は、先天性脳神経伝達異常負荷麻痺B-xx2型って言う」 「はぁ?なんだよそれ、どういう病気だよ」 聞いてもさっぱり理解出来ないヨシ。 「簡単に言ったら、脳の伝達異常がもとで、身体の筋肉への力加減が難しいのと、その影響で神経伝達が暴走するとカラダがマヒしたりするんだよ」 「んー、ようするに筋肉の老化だけが進んじまうような?」 少し考えてヨシは聞いてみる。 「それとは違うけど、まぁそんなもん…」 あまり深く突っ込ませないためにそう答えるアキラ… 「だから、走ったりすると足ツッてたのか」 ふーんと頷きながら言うヨシ。 「そー言うコト。まぁ、オレはガキの頃からコレと付き合ってるから、マヒする上限とかだいたい分かるけど、オレの知り合いに中3で発病した奴がいて、慣れなくてかわいそーだったな。でもアイツなら大丈夫だろうけど」 「アイツって?」 少し気になり聞きかえす。 「マサキっていう、オレのダチ」 「オマエに友達いたのか?ビックリ!」 驚いたように言うヨシに、ムッとなってアキラは… 「バカにしてんのか?」 「くくっ、そうかも…」 「チェ、…オレさ、みずきも友達だと思ってたんだよな…マジで…」 「何言ってんだか…」 「だよなー…」 (友達の定義って何?) もう続けて話す言葉も、みつからない。 「……」 ヨシも話さず静かに時が過ぎる。 「なんで黙ってんの?ヨシ…」 口を開いたのはアキラ。 「別にィ話す事ねぇからだろ…」 「…ヨシは、オレのコト嫌いだろ」 「何でそんな事、聞くんだよ…」 「…オレは、わがままで自分勝手、イヤな奴で大嫌い、ウルさい、目ざわり」 急にボソボソ言い出す。 「何言ってんだよ」 「ん、こうさぁルードに言われたんだよ、フラれる前に…キツかった」 呟くように話し続ける。 「…でも、引きとめるコトも出来ないオレが、悔しかったんだ…オレ、ヨシの事、気にいらねぇって言っただろ、それはシット…さっきのお前みたいに腕を持って引き止めたかった、ルードを放したくなかった。オマエの男らしいトコ、オマエのカッコイイとこ全部にシットしてた」 アキラは思っていた事を言ってみる。 「……」 シオらしいアキラを見て驚くが、無言で聞いているヨシ。 「別に嫌いってワケじゃないんだよ…オレが嫌ってる奴なんか一人いればいい方だし…」 「一人って誰だよ?」 「オメーにはワカんねーよ、優しい親父がいるんだから…愛されるってのは大切だぜ、オレは親の…」 言おうとして、緩く首を横に振り話すことをやめる。 「…なんだよ」 中途半端なところで途切れた言葉が気になり聞いてしまうヨシ。 「何でもねぇよ、忘れてくれ、オレだめなんだよ」 (ヒキョー者だから…横に人が居たら引きこんで、頼ろうとする。たぶん、みずきはオレにひっかかった、可哀相なヤツなんだ…) 「病名言ったんだから泊めてくれよな、おやすみ。オレ疲れたからもー寝る」 そう言ってソファの方へ歩いていくアキラ。 ソファに横になり瞳を閉じる。 「おい、言おーとしてる事、途中でやめんなよな、気になるだろうが」 後ろから声をかけるヨシ。 「気にするな、ヨシも自分の部屋いけばイイぜ、いつものように好きな事しとけよ…」 「……」 何も言わず、アキラを見やり自分の部屋に入っていくヨシ。 しばらくして、また部屋から出てくる。 アキラは目を閉じたままだ。 「ほら、かけとけよ」 そう言い毛布をかけ渡すヨシ。 「…サンキュ」 それだけ言って黙るアキラ。 少しその様子を見るヨシだが、アキラが寝ころぶ足元のへんに座る。 すっと瞳を開ける。 「いつものようにすりゃーいいんだろ、俺、この時間いつもTV観てるんだよ」 などと言いつつ、観る番組は決まっていないようで、チャンネルを回している。 「あーそうですか、音小さ目にな…」 アキラはわざとらしく返事を返して向こうを向き、またキレイな瞳を閉じる。 「……」 (こいつ…ケガしてても綺麗にみえるのは、ハンソクだよな…どこに、こんな顔したオトコがいるよ、騙されやがって、みずきの奴) 「……コホン」 わざとらしく咳ばらいをして、ソファにもたれ、腕をかけて足を組むヨシ。 「…んもォー」 怒りながら…ヨシに踏まれないようにカラダを丸める。

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