72 / 213
第72話
「ひとつは、オレの病気、オレが教えた以外深く調べたりしない事、もうひとつは、ルードにはオレが病気だって事言わないってこと…これを守れねぇんなら言えない」
淡々と話すアキラ。
「ルードに…?分かった、言わねぇ、絶対!だから教えろよ」
そう、さらに急かす。
じとーっとアキラはヨシを見たあと…
軽く息をついて…
「…絶対だからな、じゃ言うけど…オレの病名の正式名称は、先天性脳神経伝達異常負荷麻痺B-xx2型って言う」
「はぁ?なんだよそれ、どういう病気だよ」
聞いてもさっぱり理解出来ないヨシ。
「簡単に言ったら、脳の伝達異常がもとで、身体の筋肉への力加減が難しいのと、その影響で神経伝達が暴走するとカラダがマヒしたりするんだよ」
「んー、ようするに筋肉の老化だけが進んじまうような?」
少し考えてヨシは聞いてみる。
「それとは違うけど、まぁそんなもん…」
あまり深く突っ込ませないためにそう答えるアキラ…
「だから、走ったりすると足ツッてたのか」
ふーんと頷きながら言うヨシ。
「そー言うコト。まぁ、オレはガキの頃からコレと付き合ってるから、マヒする上限とかだいたい分かるけど、オレの知り合いに中3で発病した奴がいて、慣れなくてかわいそーだったな。でもアイツなら大丈夫だろうけど」
「アイツって?」
少し気になり聞きかえす。
「マサキっていう、オレのダチ」
「オマエに友達いたのか?ビックリ!」
驚いたように言うヨシに、ムッとなってアキラは…
「バカにしてんのか?」
「くくっ、そうかも…」
「チェ、…オレさ、みずきも友達だと思ってたんだよな…マジで…」
「何言ってんだか…」
「だよなー…」
(友達の定義って何?)
もう続けて話す言葉も、みつからない。
「……」
ヨシも話さず静かに時が過ぎる。
「なんで黙ってんの?ヨシ…」
口を開いたのはアキラ。
「別にィ話す事ねぇからだろ…」
「…ヨシは、オレのコト嫌いだろ」
「何でそんな事、聞くんだよ…」
「…オレは、わがままで自分勝手、イヤな奴で大嫌い、ウルさい、目ざわり」
急にボソボソ言い出す。
「何言ってんだよ」
「ん、こうさぁルードに言われたんだよ、フラれる前に…キツかった」
呟くように話し続ける。
「…でも、引きとめるコトも出来ないオレが、悔しかったんだ…オレ、ヨシの事、気にいらねぇって言っただろ、それはシット…さっきのお前みたいに腕を持って引き止めたかった、ルードを放したくなかった。オマエの男らしいトコ、オマエのカッコイイとこ全部にシットしてた」
アキラは思っていた事を言ってみる。
「……」
シオらしいアキラを見て驚くが、無言で聞いているヨシ。
「別に嫌いってワケじゃないんだよ…オレが嫌ってる奴なんか一人いればいい方だし…」
「一人って誰だよ?」
「オメーにはワカんねーよ、優しい親父がいるんだから…愛されるってのは大切だぜ、オレは親の…」
言おうとして、緩く首を横に振り話すことをやめる。
「…なんだよ」
中途半端なところで途切れた言葉が気になり聞いてしまうヨシ。
「何でもねぇよ、忘れてくれ、オレだめなんだよ」
(ヒキョー者だから…横に人が居たら引きこんで、頼ろうとする。たぶん、みずきはオレにひっかかった、可哀相なヤツなんだ…)
「病名言ったんだから泊めてくれよな、おやすみ。オレ疲れたからもー寝る」
そう言ってソファの方へ歩いていくアキラ。
ソファに横になり瞳を閉じる。
「おい、言おーとしてる事、途中でやめんなよな、気になるだろうが」
後ろから声をかけるヨシ。
「気にするな、ヨシも自分の部屋いけばイイぜ、いつものように好きな事しとけよ…」
「……」
何も言わず、アキラを見やり自分の部屋に入っていくヨシ。
しばらくして、また部屋から出てくる。
アキラは目を閉じたままだ。
「ほら、かけとけよ」
そう言い毛布をかけ渡すヨシ。
「…サンキュ」
それだけ言って黙るアキラ。
少しその様子を見るヨシだが、アキラが寝ころぶ足元のへんに座る。
すっと瞳を開ける。
「いつものようにすりゃーいいんだろ、俺、この時間いつもTV観てるんだよ」
などと言いつつ、観る番組は決まっていないようで、チャンネルを回している。
「あーそうですか、音小さ目にな…」
アキラはわざとらしく返事を返して向こうを向き、またキレイな瞳を閉じる。
「……」
(こいつ…ケガしてても綺麗にみえるのは、ハンソクだよな…どこに、こんな顔したオトコがいるよ、騙されやがって、みずきの奴)
「……コホン」
わざとらしく咳ばらいをして、ソファにもたれ、腕をかけて足を組むヨシ。
「…んもォー」
怒りながら…ヨシに踏まれないようにカラダを丸める。
ともだちにシェアしよう!