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第73話
その様子をじーっと見てしまうヨシ。
(愛されるのが大切だ?何が駄目なんだ?…こいつ)
あまりにじーっと見られて、視線に気付くアキラ…
「…何見てんだよ、寝れねぇじゃねぇか!」
目をあけて怒る。
「おう!ぶっさいくだなぁと思ってよ…」
わざとそう言ってみる。
「……」
ムッとしてアキラは、白いタオルを顔にかけてしまう。
それを見てヨシは…
「何?そんなに怒んなよ…」
少しアキラに寄って聞く。
「オレはキレイって言われるのが好きなんだよ」
「ぷぷっバッカでぇ、自分見て言えっての!」
「それでもキレイがいいんだよ、思っても逆の事、何回も言うな…」
「…思っても、ねぇ」
「そーう…」
ひねくれすぎもモンダイだけど、スナオすぎるのもコマリもの…。
「あのなぁ…」
ヨシがボソッと言う。
「…ん?」
「お前、俺にシットしてるって言ったよな…よく考えると俺もかもしんねぇ、お前が金持ちだったから気にくわなかったし、やっぱ世の中金だからな、金がある奴はうまくいくんだよ」
そんなことを言うヨシ。
「…そうかな…貧乏すぎもダメだけど、金がありすぎるのもダメなんだぜ、オレはこんな家より貧乏の方がよかったな…」
うちが特殊なのかもしれないけど、
金でなんでも解決してしまう…
愛情さえも…
「何言ってやがる、貧乏人になった事のない奴の言い分だぜ、ねぇよりあった方がいいに決まってるだろーが!」
「…そうだけどよ」
そう言いつつ起き上がるアキラ。
「なんだ、寝ねぇの?」
「うるさくて寝れねぇよ…」
「チッ言ってくれるぜ」
その言葉を聞いて、アキラは何を思ったか、ヨシの腕の中にもたれてみる…
瞳を閉じて…
「なんだよ…っ」
「…別に、寒いから、嫌なら向こう行ってくれよ」
「…どーいう言い回しだよオメー、ったく!」
そう言い返すが向こうには行こうとしないヨシ。
「嫌じゃねーの?」
少し顔を上げ聞く。
「別に!ボコられてブルーなてめぇに付き合ってる俺ってなーんて優しーだろうなぁ」
そう笑って言っている。
「ふふっ言ってろ」
それが少し笑えてふきだす。
「ケ!」
そして、少し考えるように黙ってまた話だす。
「…オマエさ、親にだっこされたことある?」
「はぁ?」
急に何を言い出すのかと思うヨシ。
「抱きかかえられて…たかいたかいとか、子どもの頃さ、ある?」
「…あぁ、ガキの頃、親父に、それがどうかしたのか?」
少し思い出しながら答えるが…
真意が不明で聞いてみる。
「オレさ、そういうの一回もしてもらった事ねぇんだ、っていうか…親父には手ェ引いてもらったコトもねぇんだぜ、信じれるか?」
わざと軽く話す。
触れられた記憶がない…
「信じらんねー、記憶違いじゃねぇの?」
「でもホント、オレさ、今の病気のせいで低出生体重児で生まれてさ、ずっと保育器で育って、出る頃には次の病院決まってて、退院したら、保育所には病気持ちじゃ入れないって家政婦に面倒見てもらうことになってよ…」
長々と話しだすアキラ。
「…けっこう迷惑なガキだな」
話を聞きながら口を挟む。
「だよなー、自分でもそう思うぜ、でも聞けって、その家政婦が、すっげーサイアクなんだぜ、ここからはオレの記憶なんだけど、オレを全然、柵つきのベビーベッドから出してくれないんだ。んで、3、4才くらいかな…一度脱走を試みたんだけど、みごとに頭から落ちてよー、泣いてたオレに、その家政婦何て言ったと思う?」
調子よく聞かれ、ヨシは、んー?と考える。
「危ねぇから中入っとけとか?」
「ううん、『私は病気のあなたを好きでみてる訳じゃない、ここは月給がいいから辞めるわけにはいかないんだから、よけいな事して責任問題になるような事、しないで!』って言いやがるんだぜー?どー思う、何様だぁ?とか思ったよ、子ども心にオレも…」
怒ったように思い出しながら話す。
「よく覚えてるな、オメー」
「オウ、頭だけはキレる方だったからなガキの頃から、ま、それが気に触ってたのかもしれないけど、家政婦に抱きかかえられた覚えもねぇし、親父はオレの存在じたい気に入らねぇみたいだし、義母は、弟優先だからな…オレはあんまり愛情をいただいていないお子様だったので、呆れるほどヒネくれてしまったと言うワケ、だからオレの性格をどーこう言っても今さら直らないんだよ、OK?」
またも軽く言う。
内容的に首をかしげるヨシだが…
「ってゆーか、直す気ねぇだろ、アキラ」
「ハハ、バレバレ。ま、オレが言いたいのは、てめーもガキができたら、いっぱい愛情そそいでやんねーと、オレみたいな人間になるぞって言ってんだよ。子供に自分がされて嫌だった事は、絶対しちゃーいけねぇぞってね…」
微笑み注意するようにアキラは話す。
「すっげー、普通のコト言ってらぁ…」
驚くヨシに…
「オレだって、たまにはシリアスなコトも言うんだよ!ルードも心配なんだけど、お前も親から虐待経験あるだろ?そういう奴は…自分の子どもにも同じ事してしまうって統計でてんだよ。生まれてくる子供には何の罪もねぇからな、出来るだけ、そういうのは避けてほしいと思ってな…わかる?」
もう一度聞く。
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