75 / 213
第75話
「…ンな、バカじゃねぇの…」
「…アキラも、ルードと話す時に命をかけていたなら、俺もかけれる」
「…そんなコトを真似しなくていいッ!命を粗末にするんじゃねぇ、二度とやったら許さないからな…!」
「…それでも、お前と話しがしたかったんだ」
(オレのせいかよ…)
「もォ、さいわい、傷の方は縫わなくていい傷だったけど…切った範囲が広いから、動かすとかなり痛いし、跡も残るぜ…」
息をつき、説明するアキラ。
「残ってもいい…」
「バカ、何がいいだよ!身体に傷残したら苦しい思いするのがわかんねぇのか!?」
ルードのように…いつまでも言われ続けて、忘れられない。
「…心に傷を残すよりはいい」
そのみずきの答えにアキラは言葉を返すことができなくなった。
「ッ…」
心の傷の痛みの深さはイヤと言うほど分かるから…。
「アキラ…俺は…」
「お前は、そんなにオレを苦しめたいのか!みずき…ッ」
みずきの言葉に割って入る。
「なッ、違う!俺は…」
「そうだよッ悪かったな!オレはお前の心も、そしてカラダもキズつけてしまったって、そう言う事だろっ!」
「オレとさえ出会っていなければ、そんなに傷つくことも無かった、お前の言ってる事はオヤジが言ってることと何もかわりねぇんだよッ!!」
(生レテクルナ、生キルナ…)
一気に言いつくすアキラ。
「違う!そんなことはない、これは俺自身がやった事だ、アキラのせいじゃない!」
必死に否定する。
みずきは続けて…
「…それにお前になら多少キズつけられたとしても、恨む事はない!俺は今でもアキラを愛しているから…」
静かに思いを伝えるみずき。
「…うそだよッ!愛してるなんて嘘だッ、お前はオレの言葉に惑わされただけなんだよ、愛するなんて、コトバだけ、オレがこの一週間寝たヤツ全員言ってきやがった、そいつらとオマエどこが違うんだよッ!もォ、これ以上、オレを惨めにしないでくれよ…頼むから…ッ」
ポロポロ…と最後の方は涙が流れ落ちる。
悔し泣き…なのか?
なんでもオレの言う通りにやって動いて、アイシテル。
なんて、信じれない…
オレ自身わからなくなってきたから。
ひとつ分かるのは、今のみずきを見ていると胸が苦しくなって逃げたい気分になるコトだけ…
「…アキラ」
みずきはアキラに声をかけるが…
それと重なってヨシがコンビニから帰ってくる。
「げ、お前…何、泣いてんだよ?」
アキラとまず目が合って言うヨシ。
「っなんでもねぇ、それ、巻いてやれよッ!」
クイっと涙を拭って洗面所の方へ行く。
「アキラッ」
追いかけようとするみずき。
だが…
「ッ…!」
腕がズキっと痛む。
「待てよ!みずき、何がなんだか分かんねぇけど、オメーらハタから見てると、もー終わりだぜ、シオどきなんじゃねぇの」
「ヨシ、…通せ」
行く手を阻むヨシ、みずきは言うが…
「待てって!お前らしくねぇ、落ち着いてから行動した方がいいぜ、座れよ、ヤツだって今すぐに帰ったりしねぇし、少しほっといてやれよ!」
「……」
ヨシのなだめる言葉に…
無言ですっとソファに座るみずき。
ヨシも座り、アキラに言われた通り包帯を巻いてやる。
「オマエさ、奴の事、結局どう思ってんだよ、もー俺何も言わねぇから教えろよ…」
「…愛してる、好きなんだ…」
静かに言うみずきを見てヨシは…
「ホントに?ヤツ、他の男と遊びまわって、みずきを裏切るようなコトをしても?まだ愛してるのか?」
やはり聞いてしまう。
「それは…そんな事はもうはかりにならない、でも…この気持ちはアキラを苦しめるだけなのか…オレは、どうすれば…いいんだ」
頭を抱えるみずき。
「だから、忘れて別れてやればイイんだろ」
「そんな事、出来るなら…とっくにやっている。忘れたくない…忘れられないんだ」
(ずっと想い続けてきたひと…ほんの数ヵ月だけれど、2人で恋人同士として過ごした時間は温かくて…忘れる事などできない)
「…みずき、たぶんさぁー、みずきと奴の恋愛観が、すげー違うんだよ、アイツの場合、極端なんだって、愛するコト=SEXみたいに考えてるからお前とは合わないんだよ。もっとさ、純粋な女…他にもいるんだから、あんなワケわかんねぇ奴、ほっとけよ…」
「……」
ヨシの言葉に、ただ頭を横に振るみずき。
「お前、彼女どうしたんだよ?」
「…駄目なんだ、忘れようとしても…その娘のする事を比べてしまう。アキラなら、こう言う、ああする…無意識に思ってしまう。他の人と付き合ったとしても、忘れられはしなかった…」
「んな…確かに奴はキレーだよ、並の女なんかより上いってる。ケドよ、それ以上に何があるんだよ?性格も態度だってヒネくれヤローで、ホントどこがイイんだ?俺には分からねぇ…」
呆れるように言うヨシ。
ともだちにシェアしよう!