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第78話
アキラの瞳から落ちる涙をそっと拭って、みずきは…アキラの頬に触れ想いを伝える。
「楽しいよ…。俺は…一緒に居られるだけで…SEXだけが愛のカタチじゃないだろう。もし、お前が歩けなくなったら…俺がお前の足になってやる、話せなくなったら、手話でも何でも覚えるから、一緒に居させてほしい…、アキラを、愛しているから…」
瞳を合わせて本心を伝える。
「…ッ、ふ…ゥッ」
優しすぎる、みずき…。
胸が熱くなり、涙がこみ上げてくるアキラ。
みずきの胸に、すがって泣いてしまう。
こんなオレを、ここまで愛してくれる。
ただ一人のひと…
信じたい…
本当は…
アキラの身体を優しく抱きとめるみずき…
心が重なる。
そして、そのまま、しばらく時が過ぎ…。
アキラは…
「…信じても…いい?」
抱かれたまま、ポツリと聞く…。
「あぁ…」
そのアキラの言葉に迷うことなく、まっすぐ答える。
すっと、静かに顔を上げて…
瞳を合わせ、やさしく微笑むアキラ。
……本当は、人を信じることが恐いけれど…
今は…少しだけ、信じてみたい。
目の前にいる…その人を…
そう心で密に想う。
(…アキラ)
もう…長い間、微笑みかけてもらえなかった。
みずきは、その喜びで…胸が、いっぱいになる。
――愛しい――。
心からそう想うみずき…その顔にも笑顔が戻る。
「…キス…しても、いいか?」
アキラの下唇を親指でなぞりながら、静かに少し遠慮ぎみに聞くみずき。
「そんなコト…聞かなくてイイよ、みずき」
そう応えて、アキラは…すっとみずきの首に片手をかけ、もうひとつの手でみずきの頬に触れ…静かに唇を重ねようとするが、唇が触れようとしたその一瞬前に…
「キューッキュルキュルッ!」
突然、奇妙な鳴きごえ。
「っ!」
「わっ!?」
急に聞こえたので、驚く二人…。
「びっくりした…クロ、オマエなぁ…。さすがヨシの飼ってるペットだ、ラブシーンみると鳴くようにしつけてあるのかな…?」
鳴いたのはヨシのペットのフェレットだった…
アキラはそう言いながらクロをカゴから抱き上げる。
「ふ、…かもな」
キスは駄目になったけれど、その様子が可笑しくて笑ってしまうみずき。
フェレットは、アキラの首にくるりと巻くように肩へ乗っている。
かなりなついているようで、そのまま動かない。
リボンのついたクロは、かわいいけれど、よしよし、と可愛いがるアキラの方へ目線はいってしまう。
「フフ、カワイーよな…動物って…」
フェレットを撫でながら、みずきに視線を送り同意を求めるように言う。
「あぁ…」
すっと微笑し、頷いて答える。
「オレさ、もし大学行けてたら、獣医になろうと思ってたんだ…人間キライでも、動物は好きだから…どっちにしろ免許とれないケド、知識はあるつもりなんだぜ、うーん…コイツは健康そのものだな!」
クロをじっと見て言う。
「…そうか」
それを聞きうなずくように応え、優しくアキラの肩を引きよせるみずき。
アキラは、ポツリと思い出すように呟く…。
「…どうしてるかな、アイツら…」
「あいつら?」
みずきは、気になり聞いてみる。
「ん、メアリーとリッツだよ…オレの飼い犬」
「あぁ…」
みずきも思い出す。
「……オレがガキの頃から飼ってたからな、リッツの方は目も弱まってたし…本当は、最期まで飼っていたかったんだけど…オレ一人じゃ入院したりしたら散歩も行けないし、発作とか起きたらエサもやれないから、今は知り会いの獣医にみてもらってるんだ、その方が、オレも安心だし…」
納得しているように言うが…でも、瞳は寂しそうなアキラ。
「…会いに行くか?」
静かに聞いてみる。
「……だめだよ、歩いて行ける距離じゃないし、それに…会いに行ったら別れんのつらくなるしな…だから、いいんだ…」
スッと微笑みながらアキラは言う。
「アキラ…、お前…どうして、家に帰らないんだ?」
そっと、アキラの髪に触れ、気になっていた事を聞く。
「……ま、カンタンに言うと、家を追いだされたってヤツ。親父がさ、自分の病院に入院しないと家に住ませないって言ってきやがったから、入院するくらいなら出ていってやるってな、だから今のカードキーじゃ入れないだろ、セキュリティナンバーも変えたみたいだし、けどBOUSで稼いだ金、ほとんど使ってねぇから金には困らず生きていけるから、しばらくはこの辺のホテル泊まってる」
あたり前のように言うアキラ…
「…それでは…、不便だろう。ウチに…住まないか?」
みずきは遠慮気味に誘う。
「…みずきの家に?オレが?」
その、みずきの言葉に少し驚きながら瞳を覗きこみ…窺うアキラ。
「い、や、狭いし…アキラの家とは比べものにならないが、その…」
言ってから少し慌ててしまうが…。
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