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第79話
「ふっ…ありがと、みずきがイイって言うんなら…、そのかわり、みずきに迷惑かかっても知らねーぞ!」
クスっと笑って、意地悪っぽく言うアキラ。
「全然、構わない…俺は、来てくれるのなら嬉しい…」
アキラの答えを聞いて、驚きそして喜びを表情にあらわす。
「…う…ん、さ、もう寝ようぜ、オレ疲れてるからさ…」
静かに視線を下げながら言う。
「あぁ…そうだな、向こうのソファで寝るといい…」
やさしく言うみずき。
「わかってるって、みずきは?」
「俺は…俺も今日ここに泊まっていこうと思う。明日、一緒に家に帰ろう」
アキラに促すように言ってみる。
「うん、わかった…」
「行こう」
みずきはアキラの肩に触れて促す。
アキラは頷いて、ソファへ歩き出す。
みずきもついて行き、アキラを先に座らせる。
そして、みずきも隣へ座り、そこへ身体を寄せるアキラ。
「このまま、寝ていい?」
アキラはみずきに身体を預けたまま、ポツリと聞く。
「あぁ」
優しく答える…
アキラを見つめ肩を抱く…。
(…アキラ、一緒にいる事ができて…本当に幸せ…俺が、俺でいられる)
心で深く思うみずき。
「!…そういえば、…アキラ、少し待っていて、ヨシに断ってからでないと、泊まることを…」
急に思い出したように立ち上がる。
「ぷっ、けっこう細かいな…Aガタだから?」
軽く吹きだし笑いをしながら少し離れる。
「待ってろよ…」
もういちど、アキラに言って、ヨシの部屋へと行くみずき。
みずきは、少しヨシと話して、アキラの元へ戻ってくる。
また元どおりに座るみずき。
アキラも自然に身体を預ける。
「…熱が高いな」
そっと額に触れてみるみずき、寄りかかって身体が触れているところだけでもわかるほど、体熱感があるアキラ。
「んー、そーかもな…でも、大丈夫、薬飲んだから…」
瞳を閉じながら答える。
「…ゆっくり休んで、疲れをとれよ…」
「ウ…ン、…おやすみ」
「…おやすみ」
静かに言い、みずきから…そっと唇へキスをする。
目を閉じたまま、それを受け入れる。
……みずきは、アキラと唇を重ねたことで、あることを思い出す。
それは…アキラがルードに、キスをしたと言う事実。
……だからなんだ、それがどうした。
アキラが好きなのはルード…
好きな相手にキスをするのは…
あたり前なのだから…
ずっと前から分かっていたハズが、ルード相手だと、怒りが込みあげてくる…
どうにもならない気持ち…
アキラをキズつける奴は許せない…
それが、たとえアキラが大切にしている存在でも、許せない…
けれど…
俺に何ができる、どうしても勝てない存在…
悔しい…
ぎゅっと、いつの間にかアキラの肩を寄せてしまうみずき。
「ん?…何?」
そのみずきの動きに反応するアキラ。
「大丈夫…少し…、すまない、痛いか…?」
眉間にしわを寄せて息をつくアキラをみて、少し慌てる。
アキラは体中に怪我をしているのだ。
「ん…平気、一瞬だけ…。お前も腕、切ってるだろ、痛み止めやろうか?」
微笑し、瞳を合わせてみずきを心配するアキラ。
「このくらいは、大丈夫だ…」
「そう?…オレ、やっぱり少し苦しいから、眠薬飲んで寝るよ。薬効いたら呼んでも起きないから心配すんなよ…」
そう言って立ち上がり、薬を飲みに行く。
「あぁ、分かった」
答えてアキラの姿を目で追う。
みずきもアキラを徹夜で探して、疲れているハズなのに、眠気が起きない…
一週間以上、見ることが出来なかった…
触れられなかったものを取り戻すように、大切に見つめる。
「ハイ、ただいま…」
みずきの元へ戻ってきて、アキラは、座っているみずきの膝に頭を乗せるように寝転ぶ…
みずきは、さりげなく毛布をアキラにかけてやる。
「みずき、座ったままで、寝にくいんじゃない?」
みずきを見上げるカタチで聞くアキラ。
「…いいや、このままがいい」
アキラがよく見えるこの体勢が気に入ったみずき、アキラの髪に触れそう答える。
「ふーん、変わってるなお前…ま、いっか。んじゃ、おやすみ…」
毛布を耳まで被り横を向き、瞳を閉じる。
「あぁ、オヤスミ…」
少しの時間が経って、アキラは薬が効いて、ぐっすり眠っている。
時折、詰まったような咳をする、触れていてわかるが、身体は熱いのに顔は熱が引いているように蒼白だ…
殴られた跡…
人の手当はするのに、自分の怪我は何もしていない。
アキラを傷つけた相手…
ルードを許せない…
なぜ…、俺の方が大切にするのに…
莫然と思うみずき。
「おーい、まだ起きてんのか?」
急に声がしたと思うとヨシが出てくる。
「ヨシ?」
振り返ってみる。
「あのさ、電気代、もったいねぇから電気切ってほしいんだけどよ、どうする?」
「あ、あぁ、消してくれ…」
頷いて答えるみずき、ヨシは寄ってきて…。
「アキラは?」
みずきに聞く。
「眠ってる…」
すっと微笑みまた答える。
「へー、ホントだ…お前も早く寝ろよ?仕事は?」
「明日は、休みをもらっているから…大丈夫だ。ヨシこそ、もう寝た方がいい…学校あるんだろう」
「言われなくても寝るよ、課題レポート今終わったんだ、やっと休めるぜ!」
ヨシはいつもの笑顔を向けて言う。
「…学生も大変だな、がんばれよ」
今までの事を謝る気持ちも含めて言葉をかける。
「…おう、また、落ち着いたら遊びに行こうぜ、そいつ連れてきてもイイからさ」
笑って、照れ隠ししながら誘うヨシ。
「…そうだな、ありがとう」
「おう、じゃ、俺寝るからオヤスミ」
「あぁ、おやすみ」
みずきの答えを聞いて電気を切り自分の部屋へ戻っていく。
暗闇が恐かった自分…
でも、今はもう恐くない…
アキラに救われたから…。
ふっと思い出して実感する。
そのまま、みずきも安心したように眠りに入る…
明日からの生活を夢みて…
《覚悟の再会》終
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