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第83話
「アキラ…俺は、今、不満に思う事は、何ひとつない。俺の最大の願いが叶ったから…」
アキラが傍にいてくれること…
ずっと、想ってきた事だから…。
「…でも、これから生活していく中で、不都合なことがあったなら、ちゃんとアキラに伝えていくから、アキラも遠慮なく何でも話して欲しい…」
アキラに近づきそう伝えるみずき。
「ん、分かってるって、オレは言われなくても話すよ…んーと、ソファこの辺に置いていい?テーブルは…あれ除けたら置けるかな?」
アキラはさっそく、部屋改良計画をたてている。
「あぁ、好きにしていいよ…」
それを微笑ましく見ている。
「…そう言えば、何でソファとかいるか話してないよな?」
不意に聞いてくるアキラ…
「あぁ…」
「えーと、オレもただ贅沢で言ってるんじゃないんだよ。やってもらうと分かると思うけど、床へそのまま座って立ち上がるのと、椅子から立ち上がるの…立つ時に支えがあるのと無いのじゃ結構、足にかかる負担が違うんだ。みずきん家、何も置いてないからちょっと困るなぁと思って…」
髪をかき上げながら同意を求めるようにみずきを見る。
「そうか、そうだな…。わかったよ」
優しく応える。
すっと視線を下げて、ぽつりと呟くアキラ。
「…前は、なんともなかったんだけど…な、こんなコト…」
自分の病気の進行が恐くないわけない…
以前は何気なくできていた事…ひとつひとつ困難になるたび思い知る。
自分は……
「アキラ…わかっているから」
思考をとぎれさせる優しい声…。
そっと頭を撫でてくれる。
「…大丈夫、心配しなくていいから…」
そう付けくわえる。
「…ん、……」
根拠ない『大丈夫』だけど、沈みそうな心を持ち上げてくれる力はあった…。
(…すべてを信じて…頼ることは、まだできないけれど…)
「…ん、今日からお邪魔します。よろしくな、みずき…」
にこっと笑い頷いて遅ればせながら挨拶を言ってみる。
みずきもなんだか改まって…
「あぁ、こちらこそ…よろしく」
そう応える。
その可愛いアキラの存在をかみしめながら…
みずきは心から嬉しく思う。
アキラと一緒に暮らし、俺の知らない部分や支えられる所をみつけて力になっていきたい…。
でも、アキラの自由を束縛しないようにしないと…また、別れたいと思われてしまう。
自分は独占欲が強過ぎるんだろうと実感した…。
そういう事も話さないといけないと思うけれど…、アキラが近くにいてくれるから…もう少ししてからでもイイか…と思ってしまうみずきだった。
《優しい気持ち》終
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