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第93話
ルードは、そのまま行こうとして、また戻ってくる。
「アキラ!」
「え?」
何?と見返すアキラにルードは、身体を寄せ、軽くキス…。
一瞬その場の時が止まったような感覚のアキラ…。
唇が離れて瞳が合う。
「…ルード」
驚きで名を呼んでしまう。
「イロイロごめん、それから、ありがと!じゃーなっ」
そう言葉をかけ、走って帰っていくルード。
その姿が見えなくなるまで、そこから動けないアキラ…。
…ルード、だよな…信じられないほど動揺している自分…
…ルードからのキス。
嘘じゃない…。
この数ヶ月の間、話す事すら出来ず…空白の時間に色々、考えて自分なりに区切りをつけたつもり…これまでの事も、これからの事も…。
それでも、こうしてルードが会いに来て笑いかけてくれると、心が揺らぎそうになる…。
少しくらいいいかも…と、会うだけなら、勉強を教えるだけなら、いいよな…?
誰に向かってでもなく自分自身へ、そう問ってみるアキラ。
みずきの所にだっていつまで居れるか分からないんだから…。
いいよな…?
普通に生活している分には、発作も起きないし…
走ったりしないかぎりマヒも起きないから病気は隠せるし…
みずきは…、またみずきには、我慢させてしまうのか…みずきはオレの病気の事を全部知ってる。
だから、今、オレと居ることを強く望んでいるんだ。
「…はぁ」
深い溜息をついてその場に座り込むアキラ。
混乱してる…
自分を落ちつかせようと戸にもたれる。
もう、振りきったハズのルードの登場に…言葉の意味に、動揺してる。
「…一緒に住めとかって、好きだって…」
思い出して心が高鳴るのを感じるアキラ。
「マジ、オレ…」
一瞬なにも考えられなくなって…
みずきや、病気のコトも忘れて、ついて行こうと思ってしまった。
「ヤバイよな…」
大好きな存在に…そんな事言われたら…
あんな優しいキス…されたら…。
自分の心の想いを消しさるように、頭を横に振る。
ダメだって、ルードへの想いはもう捨てなきゃならない、欲は出さないから…
(な、会ってもいいよな…みずき…)
貴重な時間…
オレのわがままだから…。
座ったまま戸へ寄りかかり、心で家の中にいる人物に呼びかける。
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