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第94話

そのみずきは、奥の部屋のベッドの上に転がって、自分の感情を抑えていた。 子供っぽい言い方をしてしまった自分…。 ルードを目の前にすると、劣等感しか自分は思えなくて… アキラは…俺より、ルードを選ぶだろう。 家に入る前、目に捉らえた光景が目に焼きつく… 俺がどんなに愛していると言っても、裏切らないと言っても、想っても…、ルードの存在には勝てない、それは…仕方がないことなのか? なぜ今、ルードが戻って来るんだ、あれだけ避けていたのに… 調子よく謝りたいだと… っ、俺は…俺はッ… アキラ… 俺のこの気持ちはどうしたらいいんだ… お前はルードとどんな話をしている? ルードは、どういうつもりでアキラと話している? ……話した後、どうするんだ? もう会って欲しくない…本当はルードの顔もみたくなかった、殴りそうになってしまう。 でも奴を殴ってしまえば、アキラに悪く言われてしまう。 もう、俺が一人で何をやっても駄目なんだ… だったら、どうすれば… いや、俺はどうしたいんだ… くそっ! グッと右手の拳に力を入れ、横に向くみずき…。 そのすぐ後に、カチャっと部屋の戸が開く…。 バッと飛び起きるみずき…すぐに視線を移す。 入ってくるのはアキラしかいないから… 「みずき…」 自然に呼ぶアキラ。 「アキラ…」 みずきは心を落ちつかせてアキラの名を呼び返す。 「…ルードは?」 みずきは一番気になることをまず聞く… 「ん、帰ったよ。オレさ、あいつの進学とか少し面倒みてやってたんだ。やっと学校行く気になってくれて、良かったよ…」 その場で答える。 「……」 何も言い返せないみずき。 アキラは続けてみずきへ… 「…これ、オレから言うのキツいかもしれないけど、嫌わないでやって欲しいんだ…ルードを、アイツやっと更正しようとしてるから、ムゲにしたくない…わかってほしい」 頼むような瞳。 「……、アキラが、そう言うなら…わかった」 みずきは矛盾を隠しながらそう答える。

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