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第95話
「ありがとう…みずきはやさしいよ。本当なら…ごめんな、オレのわがまま、何も言わずに聞いてくれて…」
静かにそう伝える。
……オレとみずきの大きな差、オレには、愛している奴を黙って他に渡すなんてことは絶対出来ない…なんとしても自分の方を向かせようとする。
お前は…お前の優しさなんだろうけど、オレは本気かどうか疑ってしまう。
本当に本気なら、オレの意思なんて関係なくアイシテ欲しい…
わからせて欲しい、みずきには、それがない…
そう心で思ってしまうアキラ。
「…アキラ」
静かに呼ぶ。
「…?」
呼ばれて視線を上げる。
「…そばに…」
ベッドに座ったまま、アキラにそっと語りかけるように呼ぶみずき。
「うん…」
頷いて、みずきの方へ歩いていく。
みずきも心で別の事を思っていた…
…俺はやさしくなんかない、嫌わないなど出来るハズがない…
もう、ルードの事などどうでもいいんだ。
ただ、アキラに、もう置いていかれるのは…
嫌われるのは…嫌だから、アキラの言う事なら出来るだけ聞きたい。
自由を望んでいたから…
すっと、アキラの手を引いて隣に座らせて、自分の方へ抱き寄せる。
アキラは、みずきの顔をみて…
「不安だった…?」
静かに聞いてみる。
「…あのまま、行ってしまうんじゃないかと、恐かった…」
みずきは頷き、そう素直に答える。
「…大丈夫、もうそんな行動力ないから…ついて行ったりしない」
やさしく語りかける。
自分がどんな顔をしているのか…
みずきは俯いたまま思い、アキラの言葉を聞く…
アキラは、みずきの前髪を細い指ですいて頬に手をあて続けて…
「だから安心しな…な」
慰めるように言う。
アキラの言葉に…何も言えずただ頷くだけのみずき。
「……」
つかの間の静寂。
「……」
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