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第98話

それを見てアキラは…スッとみずきの腕から逃れ立ち上がる。 (バカバカしい、んなハズあるかよ…みずきはただの遊び、他には何もない…そう、みずきが頼むから居てやってんだ。出て行っていいなら…行くよ…) 心で思いながらみずきに投げかける言葉。 「そっか…なら明日、荷物まとめて行くから…世話になったな…」 そう伝え、この部屋を出ようと歩き出すアキラ。 アキラが傍にいることでなんとか落ち着いていた心も、独りにされると…大変なことを言ってしまった事に、あらためてキョウガクする。 自分の元からアキラがいなくなる? ……いなく…。 『オレがいなくなった時、困るからな…』 以前アキラが言った言葉が蘇りゾクッとする。 ……嫌、だ…。 そう、思うと同時にカラダも動いていた… 後ろ姿のアキラをそのまま抱きしめる。 「うわッ、…ちょッ、なんだよ、放せッ!」 驚いたアキラの抵抗にも従おうとしないみずき… 苦しくなるくらい強く… ぎゅっと…抱きしめみずきは… 「嫌だ、お前がいなくなる…そんなのは嫌だッ、ルードの所へなんか行かせないっ行かせはしない…俺の傍に居てくれ…頼むから…」 瞳を閉じて、本当の想いを伝える。 「……」 耳のすぐ後ろで聞こえるみずきの必死な声… 何も答えずにいるアキラ。 (ウレシイのかな?オレ…) ふっと考えてしまう。 「…アキラ?」 何も反応がないアキラ…不安になるみずき。 (必要とされたから…?) 「……」 少し抱きしめた手の力が緩むみずき…困惑してしまう。 …アキラはみずきの行動に対して自分が抱いた感情を考えてしまう。 その気持ちは… 「…あのさぁ、オレ、お前の言ってる事、理解できないんだけど、出て行っていいとか、いけないとか、はっきりしろよな!」 深く考えるのをやめ、みずきの真意を探るため、少し怒り気味に言いきる。

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