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第117話

「ホント?…つまんねーの、よいしょ」 軽くかけ声を言いながら立ち上がる。 「アキラ?」 急に立ちあがるアキラを見て、どうしたのかと名を呼ぶ。 「…みずき、行こ」 半身振り返って微笑み、そう片手を伸ばす… 「え…?」 きょとんと見返すみずき。 「ふふっ」 そのみずきの顔を見てアキラは、もう片方の手で口を抑え笑ってしまう。 大きめのカッターを羽織っただけのアキラの姿は…なんとも色っぽいのだけど… どこへ行く気だろう、とホンキで考えてしまう。 「…ふろ、一緒に入ろ…みずき」 アキラは微笑んだまま呼ぶ。 「あぁ、ウン…行こう」 アキラの手をとり、立ち上がる。 優しく腕を背中にまわしてアキラを抱きよせる。 風呂場へと共に歩き出す。 不意にアキラが耳元で、ぽつりと囁く。 「…ナカでする?」 「えっ…」 アキラのその格好で…そんなコトを言われると、殺し文句に近い… 顔を赤らめ答えに詰まっていると…。 「ふふ、どーしよっかな…」 からかうように笑うアキラ。 みずきはそのアキラの言動にドキドキさせられっぱなしで…心を落ち着かせようと、軽く溜息をつく… するとアキラは… 「…怒った?」 みずきの瞳を…そっと下から覗きこんで、何ともいえない可愛い表情をする。 「…うっ」 みずきはまたも詰まってしまう。 落ち着こうという考えは…アキラの前では簡単に失敗に終わってしまう。 とりあえず… 「…怒ったりしないよ」 そう、優しく囁き返すことにした。 「うん…だと思った」 くすくす笑っている。 やっぱりわざとなアキラ… 続けて… 「…じゃ、みずきの反応みて決めよかな…」 脱衣室に来て、アキラはみずきの服をずらしながら言う。 させてあげるか、あげないか…。 「アキラ…好きだよ」 とことんアキラ主導なのだけど… みずきはそれで充分満足していて、アキラの羽織っているものもずらし取りながら… 優しく囁き抱きしめる。 「みずき…」 柔らかい声で名前を呼んでくれる。 最も大切な人が…腕の中にいて、微笑んでいてくれる… それだけで、幸せな気持ちが持続できるのだから…。 アキラに軽く手をひかれて…浴室へと進むみずき。 アキラの笑顔を絶やさないようにするためなら…出来るかぎりのことをしてあげたい、そう心の底から想う…。 さして広くない浴室内に…2人だけ…。 その時を大切に想い… 夜は更けてゆくのであった。 《複雑な想い》終

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