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第142話
「…まぁ、それなりに出来てればいいんじゃないかな、ルードみたいに調理師目指すわけでもないし…気にしなくても」
気を楽にさせようと言った言葉だけど…
みずきは、ふいに無言になる。
「あ、もしかして気にしてるのか?」
ふと気付いてアキラは聞く。
「…少し…アキラは、ルードが作った食事をずっと食べていただろ」
心配そうに話す。
アキラは頷いて…
「そうだよ…」
それが何?とみずきを見上げる。
「…ルードの料理が美味いのは確かなんだ。だから、ここに来て…アキラは俺の作った物を食べてる。本当に、おいしいと思ってくれているのか…アキラがあまり食べないのは、口に合わないからじゃないかって思えて…」
不安そうに聞くみずきをみて、アキラは大きなため息をつき…
「ばか、違うって…どーしてそう思うかな」
困った感じに首を傾げる。
「前から言ってるけど、食べないんじゃなくて、少しずつしか食べられないんだよオレは…」
少し強い口調でアキラは言い続けて…
「…あのな、みずきが気にしなくても美味いから食べてるんだし…マズかったらマズいって言うよ。それに、みずきはマズいものオレにださないだろ?」
やれやれという感じに言葉を繋げる。
「あぁ…」
微妙に頷くみずき。
「ふぅ、なんだかなぁ、もっと自信持って、オレが作ったんだから文句言わずに食え!くらい言えばいいのに…」
笑って言ってみるアキラ。
「…それは…」
首をかしげ少し苦笑。
「ま、そんなみずきはみずきじゃないか…」
アキラは壁に掛けてあるエプロンをつけ、髪を結びながら言う。
「さ、作ろっか…」
そう付け足して言って、小さなキッチンへ向かう。
その姿を見てみずきはポツリと呟く…
「…可愛いな」
エプロン姿をしても…やっぱり可愛いアキラ。
見ているだけで温かい気持ちになる。
そうみずきが実感していると…
「ん?…早く来いよ!作るんだろ?」
顔をしかめながら促す。
「…あぁ、すまない…作ろう」
軽く謝り、また微笑んでアキラの元へ向かうみずき。
そして、みずきはアキラに注意されながら…
二人で話しながら食事の準備をする…
それは…独りではとても出来ないことだから…。
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