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第155話
その様子をみて…
苦さを伝えられて、やや嬉しそうに…
「はは…な、マズいだろ。オレの薬は風邪薬とかとは違うから、キツいんだよ、胃にも悪いし…包んで飲んでもかなり口の中に残るんだ」
そういい、アキラも薬を口に含み水で流し込む。
「ん…はぁ、マズ…」
そうは言うものの、アキラはさほど表情もかわらず、その激物を飲んでいる。
「……」
さらに言葉を無くすみずき。
「大丈夫?気分悪くなった?…みずき」
何も言わなくなったみずきを心配して、アキラは額に軽く触れて聞いてみる。
「いや…驚いただけ、吐きそうになる苦さなのに…」
アキラは平然と飲める所がすごいな…と思う。
「オレは慣れてるからな。初めて飲んだらそうなるって…だから、あんまり薬に頼りたくないんだけど、手放せないからな…どうしても」
ため息をついて呟く。
「アキラ…わかった、俺が出来るだけ薬の代わりに支えになるから、今度からそんなモノ飲まなくていいよ…」
アキラが楽になると思ったから薬を勧めていたけれど、飲みたくない物を度々飲ませる事はない…
あんな身体が余計悪くなりそうな味の薬を…
最後の方はみずきの個人的考えだったが、そう伝える。
「ふ、そんなモノね…」
それでも、手放せないものだけど…
そうとう薬の味に引いたんだなと思って、軽く笑いながら続けるアキラ。
「ありがと、じゃ、今度からはピンチの時だけ薬に頼るからな…みずき、足マヒした時とか、庇ってくれよ…」
「あぁ、当然だ…」
アキラの言葉に、言われなくてもと頷き答える。
頼る事…頼れる相手がいることが…とても救いになっていると、ふと思うアキラ。
以前は…
薬しか頼るものがなかったから…ためらいもなく服用していた。
でも、そうする事で、飲みやすかった錠剤の薬は、自分の身体には効きにくくなってしまった…
恐いことは…この少し強い粉薬も…
さらに強い液薬も…いつかは身体が慣れて効力がなくなる時がくるかもしれない…
それはとても恐いこと…
だから、出来るだけ薬を使うのはさけたい…
今は、みずきが横にいるから…
無茶な飲み方はしなくていいし…
病気を隠さず、ありのままのオレで居られるから…
心の中でもみずきに感謝しながら会話を続ける。
しばらく休んで、店を後にする二人。
クリスマス・イヴの街を、またアキラの行きたいところへ…
みずきは優しく付き添っていくのだった…。
《クリスマス・イヴ》終
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