154 / 213

第155話

その様子をみて… 苦さを伝えられて、やや嬉しそうに… 「はは…な、マズいだろ。オレの薬は風邪薬とかとは違うから、キツいんだよ、胃にも悪いし…包んで飲んでもかなり口の中に残るんだ」 そういい、アキラも薬を口に含み水で流し込む。 「ん…はぁ、マズ…」 そうは言うものの、アキラはさほど表情もかわらず、その激物を飲んでいる。 「……」 さらに言葉を無くすみずき。 「大丈夫?気分悪くなった?…みずき」 何も言わなくなったみずきを心配して、アキラは額に軽く触れて聞いてみる。 「いや…驚いただけ、吐きそうになる苦さなのに…」 アキラは平然と飲める所がすごいな…と思う。 「オレは慣れてるからな。初めて飲んだらそうなるって…だから、あんまり薬に頼りたくないんだけど、手放せないからな…どうしても」 ため息をついて呟く。 「アキラ…わかった、俺が出来るだけ薬の代わりに支えになるから、今度からそんなモノ飲まなくていいよ…」 アキラが楽になると思ったから薬を勧めていたけれど、飲みたくない物を度々飲ませる事はない… あんな身体が余計悪くなりそうな味の薬を… 最後の方はみずきの個人的考えだったが、そう伝える。 「ふ、そんなモノね…」 それでも、手放せないものだけど… そうとう薬の味に引いたんだなと思って、軽く笑いながら続けるアキラ。 「ありがと、じゃ、今度からはピンチの時だけ薬に頼るからな…みずき、足マヒした時とか、庇ってくれよ…」 「あぁ、当然だ…」 アキラの言葉に、言われなくてもと頷き答える。 頼る事…頼れる相手がいることが…とても救いになっていると、ふと思うアキラ。 以前は… 薬しか頼るものがなかったから…ためらいもなく服用していた。 でも、そうする事で、飲みやすかった錠剤の薬は、自分の身体には効きにくくなってしまった… 恐いことは…この少し強い粉薬も… さらに強い液薬も…いつかは身体が慣れて効力がなくなる時がくるかもしれない… それはとても恐いこと… だから、出来るだけ薬を使うのはさけたい… 今は、みずきが横にいるから… 無茶な飲み方はしなくていいし… 病気を隠さず、ありのままのオレで居られるから… 心の中でもみずきに感謝しながら会話を続ける。 しばらく休んで、店を後にする二人。 クリスマス・イヴの街を、またアキラの行きたいところへ… みずきは優しく付き添っていくのだった…。 《クリスマス・イヴ》終

ともだちにシェアしよう!