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第156話《イヴの夜》
その頃…
時を同じくしてクリスマス・イヴの街に遊びに出ていた3人組がいた。
「はぁ…わざわざ、人が多い日選んで来なくてもいいのに…」
ため息をついて呟くのは、茶髪色白、見た目は可愛い楠木コウジだ。
「なーに言ってんだよ!こういうイベントにはデートしなきゃ付き合ってる意味ないだろ!つーか、いつ抜けてくれるワケ?工藤…」
言葉を返すのは、お付き合いも意外に長く続いている、幸田瞬助。
コウジを挟んで向こう側にいる邪魔者の、工藤たくみに話しかける。
「抜けるつもりはないけど?」
平然と笑って言うたくみ。
「お前なぁ、少しは気をつかえよ、いっつもついてきて…デートにならねぇだろー!」
あからさまに言う瞬助、それに答えたのはコウジ。
「…たくみは僕が呼んだんだから、たくみにあたらないでよ、別に邪魔されてる訳じゃないんだからいいでしょ?」
そう言い返す。
「居ること自体邪魔だよ…」
ぼそっと瞬助は言うと…
「たくみが抜けるなら僕、帰るよ?」
つーん、とまた言い返す。
「ぐっ…なんでそういう事いうかなー、俺たち恋人同士だろ?」
瞬助はコウジの背中に腕を回し、腰のあたりを持って引き寄せながら問う。
「…うん。そうだね…」
「じゃ、何で2人きりでデートしてくれないんだよ」
不満そうに言う瞬助。
「だって、2人きりだと瞬のペースに流されそうで、ヤダ」
寮では、常に一緒なので瞬助にリードされてしまうから、外まで主導権を握られるのは悔しくて、コウジは親友のたくみを呼んでしまうのだ。
しかも、普通は嫌だと思うのに、たくみが断らないから…毎回、ついてきてもらう習慣になってしまった。
瞬助もたくみがいるとそれほど強引にはならないし…安心できる。
じゃないと瞬助はセーブがきかないから困る。
はぁ…と溜め息をつく。
それでも…
そういう瞬助のことが好きで…今まで、一緒にやってきたら…これからも続いていけたら嬉しい…
心の中で想うコウジ。
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