156 / 213

第157話

そんな事はつゆしらず、瞬助は軽く舌打ちしてコウジを放しながら… 周りに目を向けて… 「あっ!おぉ、すっげ~美人っ」 目に止まった人物… 茶髪がなんとなくコウジに似ている姿に見惚れるように、ぼーっと眺める瞬助。 …バシッ!! コウジは思わず瞬助の頭を叩く… 「ってーなぁ、何すんだよ!」 頭を擦りながら…コウジの方へ軽く振り返って怒るが。 「べつに…。いこ、たくみ…」 ツンと頬を膨らしたくみの方へ逃げるコウジ。 瞬助は…いつも目移りしやすい。 わざとなのか、本気なのか…可愛い娘を見ると黙ってはいない。 さっきみたいに僕が怒るのを知ってるのに… 他の娘を褒めるんだから… それで何度、別れ話に発展するケンカをしたかわからないのに… その癖は直らない。 なんか、こんな奴だけど離れられない自分が悲しくなる。 「あ、待てよコウジ…スネるなって、なんかお前に似てるなぁって思って…コウジが一番美人に決まってるだろ!」 またコウジの肩に腕をかけ引き戻しながら、瞬助は弁解して言う。 「嘘ばっかり…」 納得した訳じゃないけれど… ここでケンカしても始まらないので、ため息をついて笑顔を戻すコウジ。 ふと、振り向くと…たくみが立ち止まっているのに気付いて呼んでみる。 「…たくみ?どうしたの」 その問いにたくみは… 「…あれって、コウジの…」 さっき瞬助が見惚れていたその人物を視線で差して、教えてくれる。 「嘘っ!アキ兄…!?」 驚いて声を出してしまう。 「何?アキニイって?」 ふたりのやり取りを見て、すかざず聞き返す瞬助。 「…あれ、兄だよ、コウジの…」 答えたのはたくみ。 「えぇッ…兄!?姉じゃなくて?…どーなってんだ?オマエんちのDNAッ」 かなりびっくりして言う瞬助だけど… ふと思い出すように首をかしげ… 「確か、付き合う前…兄キにキスされた事あるって言ってたよなコウジ、それってあの人?」 かなり昔のコトを引き出して聞いてくる瞬助。 「…何でそんなコト覚えてんの?」 えっ!と、なりながらはぐらかすコウジ。

ともだちにシェアしよう!