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第157話
そんな事はつゆしらず、瞬助は軽く舌打ちしてコウジを放しながら…
周りに目を向けて…
「あっ!おぉ、すっげ~美人っ」
目に止まった人物…
茶髪がなんとなくコウジに似ている姿に見惚れるように、ぼーっと眺める瞬助。
…バシッ!!
コウジは思わず瞬助の頭を叩く…
「ってーなぁ、何すんだよ!」
頭を擦りながら…コウジの方へ軽く振り返って怒るが。
「べつに…。いこ、たくみ…」
ツンと頬を膨らしたくみの方へ逃げるコウジ。
瞬助は…いつも目移りしやすい。
わざとなのか、本気なのか…可愛い娘を見ると黙ってはいない。
さっきみたいに僕が怒るのを知ってるのに…
他の娘を褒めるんだから…
それで何度、別れ話に発展するケンカをしたかわからないのに…
その癖は直らない。
なんか、こんな奴だけど離れられない自分が悲しくなる。
「あ、待てよコウジ…スネるなって、なんかお前に似てるなぁって思って…コウジが一番美人に決まってるだろ!」
またコウジの肩に腕をかけ引き戻しながら、瞬助は弁解して言う。
「嘘ばっかり…」
納得した訳じゃないけれど…
ここでケンカしても始まらないので、ため息をついて笑顔を戻すコウジ。
ふと、振り向くと…たくみが立ち止まっているのに気付いて呼んでみる。
「…たくみ?どうしたの」
その問いにたくみは…
「…あれって、コウジの…」
さっき瞬助が見惚れていたその人物を視線で差して、教えてくれる。
「嘘っ!アキ兄…!?」
驚いて声を出してしまう。
「何?アキニイって?」
ふたりのやり取りを見て、すかざず聞き返す瞬助。
「…あれ、兄だよ、コウジの…」
答えたのはたくみ。
「えぇッ…兄!?姉じゃなくて?…どーなってんだ?オマエんちのDNAッ」
かなりびっくりして言う瞬助だけど…
ふと思い出すように首をかしげ…
「確か、付き合う前…兄キにキスされた事あるって言ってたよなコウジ、それってあの人?」
かなり昔のコトを引き出して聞いてくる瞬助。
「…何でそんなコト覚えてんの?」
えっ!と、なりながらはぐらかすコウジ。
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