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番外編 帳の日常
朝から書類に目を通してはサインをする帳
昼になっても終わらない仕事にふっと息を着く
そしてまた仕事を開始する
帳が会長になってから彼の秘書になった只倉正紀
彼は帳の仕事ぶりに困惑していた
昼食も取らないで仕事に没頭する彼
たまには休憩してくださいと言うも
ああ、と言うだけで一向に手を休めようとはしない
全くどうしたものかとため息をつく正紀
そんなとき任務から八尋達が帰ってきた
トントンとドアをノックする音と共に入るぜと八尋の声がしてガチャリとドアが開く
「よう帳、対象の吸血鬼無事狩ってきた
これ詳細の書類」
「ああ、そこに置いといてくれ」
八尋は帳の言う通りに机に書類を置いた
そして八尋の目にはまだ手をつけていない昼食であろう食事が置かれているのが見えた
「……お前また飯食ってねぇの?
ちゃんと食わねぇと倒れるぜ?
そうなったら浬がうるせぇぞ」
「いちいち言われなくとも分かっている
今食べるところだ」
帳はやや不機嫌そうにそう言うとようやく食事に手をつけた
どうやら彼は浬の名を出されるのが効くらしい
正紀はいいこと聞いたとメモした
そして八尋が去り食事をしていた帳はそこそこに再び仕事へと取り掛かる
本当にこの人はワーカーホリックだ
正紀はまたため息をつき自身も仕事に取り掛かった
それから二時間が経ちパソコンに向かっていた正紀はひとつ伸びをした
「あの聖城さん」
「なんだ?」
「えっと、そろそろ休憩なさっては?
コーヒーでもいれますよ」
「……そうだな」
コーヒーを淹れ差し出すとありがとうと受け取る帳
そしてそのコーヒーを口にするとふっと笑った
「お前の淹れるコーヒーは美味いな」
「あ、いえ……ありがとうございます」
ドキリとした
あまりに綺麗に笑うから……
元々吸血鬼の血が入っている帳だ
美しいのは分かっているが
普段笑わない帳が笑うと男の自分でも顔が赤くなってしまう
これが帳という男かと正紀は思った
全く帳といい八尋もイケメンな部類に入るというのに自覚がない
平凡な顔の正紀ははぁとため息をついた
そして帳は少しコーヒーを飲み休んだところで再び仕事に取りかかった
全く仕事中毒だ………
仕方ない人だと正紀も仕事に戻るのだった
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