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番外編 藜の苦悩③
常にニコニコと明るく患者と向き合っている彼
柳瀬久木は半吸血鬼だった
とは言えここの鬼の噂とされている人物と断定出来るわけではない
しかしながら現在一番有力なのは彼しかいない
さて、どう吸血鬼を暴くか……?
吸血鬼の襲われたと言う女性に話を聞いてみると
いきなり後ろから襲いかかってきて顔は見ていないとのこと
そしていつの間にか気を失って気が付けば診療所のベッドの上
他の人物もそうだった
結局なんの情報も得る事は出来なかった
今日はもう遅いと言うことで村長の家に泊まらせてもらう事となった
家の内装は村長と言えど質素なものだ
こう言うところが村人から信頼される要素なのか
「狭くて悪いな」
「いえ、十分です」
「本当に鬼を退治してくれるんでしょうな?」
「勿論です
その為に我々は存在しているのですから」
さぁ吸血鬼狩りの始まりだ――――
その日の深夜藜達は村を見回った
しかしこの日吸血鬼が現れることはなかった
結局空振りに終わり次の日藜は診療所へ足を運んだ
今日も柳瀬久木は診療所で患者を診ていた
相変わらず人気者でまるで彼に会うために来ている者もいると言っていいほどだ
しかしそんな人達にも分け隔てなく接している
まるでアイドルのようだ
そして藜は彼を見張ることにした
気配を悟られないように物陰に隠れながら彼を見る
そして彼が動いたのは昼間の採血の時だった
「採血しますよー」
そう言って彼は患者から血を抜き取っていく
その後彼はこの部屋を後にした
「そうやって血を得ているのか?」
彼は藜の方をちらっと見るも手元に目をやる
「……でなければ我々は生きては行けません
貴方なら分かるでしょう?」
「そうだね
まぁこれくらいなら許容範囲かな
けれど柳瀬君、これからずっとこれが続けれると思わない方がいい」
「久木でいいですよ
分かってます
我々は年を取らない
僕ももう40はこえてますからそれは分かってます
だからいつまでもここにはいられない
いつかは出ていくつもりです
けれどここには医者を必要とする人が沢山います
それが心残りではありますが」
そう、吸血鬼は年を取らない
故にずっとここに居続ければ自分が人ではないと悟られてしまう
それを避けるために久木はいろんなところを転々としてきた
そして今から数年前にここにやって来たのだ
医者のいなかったこの村は大歓迎で彼を迎えたのだ
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