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番外編 藜の苦悩⑤

この日も久木を見張るも特に異変はない それどころか藜達がここに来てからと言うもの 吸血鬼が現れることはなかった ますます分からなくなる それでも吸血鬼を狩るまではここから出ていくこともできない 全く面倒なものだ 「藜さんどうします?」 「どうもこうも、彼を見張るしかないだろう」 と言って見張りを続けるも何もなく それから一月が経った 全く変化がないこの村にずっと留まるもの無理が出てきた ただでさえ協会は今人手不足 そろそろ本部へ戻らなければならない そして結局吸血鬼を見つけることすら出来ず帰った だがその数週間後だった また鬼が現れたと村から連絡があった 今度は夜遅くに民家へ侵入し人を襲ったと 幸い今回も死者はいなかった 藜達は再びその村へと足を運んだ 「一体どう言うことだろうね?」 何故一月も現れなかった吸血鬼が今になって現れたのだろうか? ならば藜の考えは一つだった 「藜さん」 「久木君…… どうした? また血が足りなくなったかい?」 「いえ、あの…… どうか吸血鬼を退治してください そしてこの村に平穏を……」 そう訴える彼の目はとても真剣なものだ よほどこの村が好きなのか だとしたら残酷なことだと藜は思った 真実を知ったら彼はどうなるのだろうか? それでも任務を遂行しなければならない この村のためにも、彼のためにも…… そしていよいよ藜は吸血鬼を狩る準備を始めた これで終わる そう信じて――― 「さて、多分今回吸血鬼が現れる これで終わりにする」 準備万端で挑むこの吸血鬼退治 夜になり村のあちこちに人員を配備した そして静けさの中突然爆音と強い光が放たれた 閃光弾だ そこに吸血鬼が現れたと言う合図だ 藜は達はその閃光弾を頼りにそこへ向かう すると民家に忍び込み目を赤く染め口からは血が滴り落ちる吸血鬼の姿があった そして床には女性が倒れている 「ゔぅぅ……ぐぁぁぁ!!」 吸血鬼は我を失っているようで唸り声をあげ こちらを威嚇している 今にも藜達に襲いかかってきそうな吸血鬼に 討伐隊は銃口を向ける 「全く……嫌だね 君を殺したくはないと言うのに…… ねぇ、久木君」

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