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番外編 藜の苦悩⑦

「残念だ久木君」 銃口を久木に向ける藜は引き金に人差し指を添える そして引き金を引こうとしたその瞬間だった 「待ってくれ!!」 そう男の声がした 藜が振り返るとそこには村長が立っていた なぜ彼がここにいるのか? まさか吸血鬼狩りの様子を見ていたなんて 気づかなかった そして彼は藜の前にやって来て まるで久木を庇うかのように藜の前に立った 「一体何のつもりですか?」 「彼を……久木を殺さないでくれ」 「……っ!!」 あろうことに鬼を退治してくれと頼んできた村長がその鬼を庇った 前に立たれてしまった藜は仕方なく銃口を下ろすが まだ納得はしていない ようやく吸血鬼をあぶり出したと言うのにそれを邪魔されるのはいい気分ではない とは言え内心少し安心している だがまさか久木を庇うなんて思いもよらなかった それは庇われた本人が一番ビックリだった 自分は人を襲う化け物だと言うのに一体何故庇うのか理解できなかった 「彼はここの医者だ 彼がいなくなればこの村も衰退する一方だ それに彼はこの村の一員なのだ」 この村には医者がいなかった 当然だろう 人が少ない上にお金を持っているものも少ない そんなところに来てくれたのは久木だった 久木が来てくれたことによって村には活気が出た 彼の容姿は勿論、特に人望は誰よりも厚い だからこそ村長は藜の前に出てきたのだ 「お前を殺させはせん もし血が必要だと言うのなら我々が何とかしよう」 「……村長」 村長の熱意に圧され藜は取り合えず久木を撃つ事を止めた そして話の場を設けた 「お言葉ですが村長 彼は村人を襲ったのですよ? 貴方が許すと言っても村の皆はどうでしょうね?」 「ああ確かにそうだ だがきっと話せば分かってくれる」 「…………」 全くどうしたものか…… 覚悟を決めて久木を滅すると決めていたのに こんな形で遮られるなんて思いもよらなかった さてどうするか? このまま彼を生かしておくか 「全く…… 予定が狂った」 「藜さん どうします?」 「取り合えず上から返事を待つ 話はそれからだ」

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