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番外編 藜の苦悩⑧

久木を庇った村長は村人に事の真相を話した すると驚くことに村人は誰一人久木に怒ることはなかった 寧ろ辛かっただろうとか同情の声が聞こえてくる 藜は意外すぎて唖然とした 今までに半吸血鬼を何度か見たことはあった けれど皆蔑まれ、疎まれ、最後には討伐隊に狩られる、そう言う運命を辿る者ばかりだったから 藜は自分は幸い運が良かっただけだと思うだけだが 「こんなによくしてもらって自分にはこの村は勿体無い……」 「ならば協会で働くかい? そしてこの村には他に医者を手配しよう そうすれば文句はないだろう 血も手に入るし」 「…………いえ、 この村に医者を連れてきてくれるのは有り難いです でも僕は、生きてていい筈がない どうかここで滅して下さい」 自分を殺してくださいと懇願する久木 それに対して藜はどうしようかと苦笑いを浮かべる ここで殺せば一件落着なのだが村人はそれを許さないだろう 「ならばこうしよう 協会で働いてみて自分はいらないと感じたら これを使え」 そう言って彼に渡したのは吸血鬼用の銃だった もし働いてみて自分が死ぬべきだと思えば自分で自害しろとの意味だ 正直藜としてはこの件で面倒な事は避けたかった 村人に久木を殺していつまでも責められるのは面倒だと思った そして銃を受け取った久木はその銃を懐に仕舞った 藜の言う通り一度協会へ行ってみてから考えてもいいと思ったからだ 協会もその藜の案を受け入れた 今は協会も医者はいくらでも必要な状況だった 一般の病院を運営しながら吸血鬼との対峙と負傷した物の対応もしなければならず大変な状況だったのだ それから久木は協会の病院に就いた 最初は色眼鏡で見ていた周りの者も久木の人柄に次第に受け入れていった とは言え未だ久木を快く思っていない者もいるが それでもここに従事できることはとても充実していた あれから時が経ち現代 協会は少しずつであるが変わった 帳が会長になり半吸血鬼に居場所ができた これも藜が作り上げた結果でもあるだろう 「藜さん 僕は貴方の事好きだったんですよ? 貴方だけが僕を分かってくれた そして貴方の孫がその意志を継いでくれている 感謝してます」 そう藜の墓の前に花束を添える 「これももう必要ありませんね」 そう言って藜に渡された古びた銃を取りだし それを花束と共に墓に置いた 「愛してます藜さん やっと……伝えられました」

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