3 / 135

第3話

『じゃあ、行ってくるね。 いい子に待ってるんだよ。』 そう言ってこの日も藜は出掛けていった。 たまに浬を置いて出掛け翌日の朝には戻ってくる。 筈だった……… 藜が出ていってからもう昼が過ぎた。 帰ってくる気配はない。 捜しに行くべきか? けど藜は絶対外に出るなと言っていた。 それにこの日は陽光眩しい。 陽に当たっても死にはしないが吸血鬼にとっては辛いものだ。 「藜…………」 その後いくら待っても藜は帰ってこず夜になった。 不安で押し潰されそうになる浬。 陽が沈み満月が顔を出している。 ずっとここにいてもただ不安になるだけだと浬は外に出て捜しに行くことにした。 とは言え藜が何処にいるのか検討もつかない。 藜と一緒にいるときは気が付かなかったが街は混沌としていて気味が悪い。 貧しさ故に路肩にうずくまる者、酒を飲んで騒いでる者、男と女が戯れていたりとネオンがきらめく街なのにそれらが全て灰色に見える。 こんな状況で益々心細くなっていく。 「藜……何処……?」 浬の言葉に誰も答えてくれるはずもなく虚しく街の中には消えていった。 「よう、かわい子ちゃん。」 「!?」 急に声をかけられ振り返ると酒の瓶をもった酔っぱらっいの大男がいた。 彼は浬に近づくと可愛いなと言いながら顎に手を添える。 「こんな時間にこんなところで一人か? 無用心なことだ、俺が一緒にいてやるよ。」 浬はこの男が危険だと察しどうにか逃げなければと手を振り払い思いっきり走って逃げた。 「おいコラ待て!!」 男が追いかけてくるが浬は振り返らず兎に角走った。 相手が大柄な体格と言うのもあり浬は狭い路地を通る。 「糞ガキが!!」 男は自分の通れない場所へ浬が逃げ込むと悔しそうに叫び諦める。 「はぁ……はぁ……はぁ……」 何とか男を巻いたがこれでは藜を探すどころか元いたホテルにさえ戻れない気がする。 疲れきって地面に座り込む浬の目には自然と涙が溢れてくる。 すると浬の方に近づいてくる足音が聞こえる。 一瞬藜かと期待するもそこにいたのは全くの知らない男だ。 しかし様子が変だ。 赤く光る瞳、青白い肌に鋭く尖った牙が光るのが見えた。 そして人とは違う気配。 紛れもない吸血鬼だ。 「美味そうな子供だ。」 「………っ!!」 恐ろしい気配に逃げようと背を向けるがあっさり腕を掴まれた。 そして吸血鬼はゆっくり浬の首筋に牙を突き立てる。 「ぁ………!!」

ともだちにシェアしよう!