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第4話
浬の首筋に牙を突き立てる吸血鬼に抵抗虚しくもう終わったと諦めたその時だった__
バンっと大きな音が響いた。
その瞬間浬を捕らえていた吸血鬼がバタリと倒れ浬も地面に膝を着いた。
振り返ると血を流し倒れている吸血鬼の遠く後ろには数人の男達と銃を構えた一人の男が立っていた。
そしてこちらに歩いてくる彼等は皆同じ黒い服を着ているが銃を持った一人だけ薄茶のコートを着ている。
その人物を見て浬は驚いた。
「藜………?いや、違う……」
彼の顔が藜によく似ていた。
けれど藜ではない。
彼よりも少し若いようで20代後半くらいに見える。
藜にそっくりな彼は浬の前でしゃがんだ。
「大丈夫か?」
「う、うん………」
「そうか、良かった。」
優しい笑みを見せる彼は本当に藜のようで思わずすがってしまいそうになる。
けれど彼は藜じゃないと伸ばしかけた手をそっと引っ込めた。
そして彼は黒服の彼らにまだこの辺りに他の吸血鬼がいないか探せと命じこの場には藜に似た彼と二人だけになる。
「もう大丈夫だ。
我々は十字協会の者だ。」
彼は聖城帳 と名乗り、さっきのは吸血鬼なのだと彼は浬が何も知らない前提で色々と教えてくれた。
そして彼は人に害の成す吸血鬼を制裁を下す為の協会のメンバーなのだとそれは初めて知る情報だった。
人の血を吸ったりすればさっきの吸血鬼のように殺されるのだろうか?
浬は自分も藜の血を吸っていると知られれば殺されるのかもと怖くなる。
「それにしても一人か?
親や兄弟は?」
帳の問いに浬は首を横に振る。
「人、探しに来た。
帰ってこないから……」
「いなくなったのか?」
うん、と浬は頷いた。
そして彼はどんな人かと訊ねてきた。
一緒に捜すと言ってくれた。
「……えっと……帳に似てる。」
「私に?」
「うん、名前は藜。」
「____っ!!
………藜?」
帳は大きく目を見開き驚いた表情を見せた。
藜を知っているという反応だ。
「藜と言ったか?私とよく似た………
お前は藜さんとどういう関係だ?」
「え?えっと……吸血鬼のとこから助けてくれた。
ずっと一緒にいた、けど帰ってこない。」
「そうか………
取り敢えず私と来なさい。」
「なんで……どういう事?ねぇ、藜を知ってるの?
ねぇなんで?」
何故彼が藜を知っているのか。
何故一緒に来いと言うのか。
浬は何がなんだか分からず混乱していまっていた。
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