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第5話
帳は詳しい事は何も答えず兎に角一緒においでと浬の手を取り先程周辺を見廻りに行っていた黒服の人達と共に車に乗り何処かへと向かった。
車内で浬は帳に何処に行くのか、藜を知っているのか、質問するもその内分かるとあまり答えはしなかった。
その代わりに帳は不安で仕方ない浬にそっと頭を撫で自分の方に浬の頭を引き寄せた。
その様が藜と似ていてとてもあたたかい。
藜と彼はどんな関係なのだろうか?
親族なのではないかと思うほどによく似ている。
けれど帳からは吸血鬼の気配は感じない。
浬は疲れきってしまったのと彼に安心していつの間にか眠ってしまった。
「起きろ、着いた。」
「ん…………」
帳に起こされ目を覚ませば車は停車しており外に出る。
すると目の前には大きな教会のような建物が聳え立ちその立派な外観に思わず息を飲む。
「ここは協会の本部だ。」
協会の本部………
帳においでと言われ着いていく。
中はとても広く沢山の人がいてそして皆帳に頭を下げて挨拶をしている。
帳が偉い立場なのだろうと思った。
エレベーターに乗り上へと上がり、そこから降りると先程の帳といた黒服の人達と同じ服を着ている人が二人いた。
帳を見るなりこの人たちも頭をさげる。
そして連れていかれた先には部屋がありその扉の前にやってきた。
帳がノックすると中から入れと男性の声がする。
「失礼します。」
「帳か………」
男性は70代くらいだろうか?
眼光が鋭く少し怖くて浬は帳の腕にしがみつく。
「して、その子供は?
吸血鬼の気配がするのだが?
いや、正確には人と吸血鬼の気配と言うべきか。」
「!!」
彼は浬が半吸血鬼だと見抜いており浬は自分が吸血鬼だと知られ焦る。
もしかしたら殺されてしまうのではと……
対照的に帳は浬が吸血鬼だと知ってか知らずかポーカーフェイスのままだ。
「…………この子供は藜さんと行動を共にしていたようですので連れてきました。」
「藜だと?」
「ええ、しかし藜さんの行方は分からずじまいですが。
この子が何か手掛かりなのは間違いありません。
詳しい事は後々報告します。」
「そうか……」
彼は五十嵐翁玄 。
この協会の会長で一番偉い人だそうだ。
「………しかし彼は一体何を考えているのか?」
「さぁ?私に聞かれましても……
それよりこの子供ですが身寄りもないようなので私が引き取ります。
どちみち普通の子供のようには生活はできないでしょうし。」
「任せる。」
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