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第8話

___あの日彼は、吸血鬼に兄を奪われた。 両親はいない。 母は男好きで家を出ていったきり帰っては来なかった。 まだ小学生だった自分を引き取ったのは飲食店で働く11歳上の兄。 彼もまた母の被害者だ。 高校の学費は母のホストで遊ぶ金に消え払えず 高校に行かずに働く道を選んだ。 成人したとは言え中卒で小学生の弟を養うなど到底無理な話だ。 それでも兄と一緒にいたいと願う自分の為に夜の仕事をし何とかギリギリの生活を送れていた。 けれどある日。 中々一緒にいられない兄に不満で喧嘩した。 自分の為に頑張ってる兄にもっと傍にいろと言うのは無理な話だ。 分かってるけど寂しかった。 そんな中夜が明ける前の事だった。 突然バリンと大きな音がして起きると窓から血塗れの男が入ってきた。 男は瞳を赤くし兄が様子がおかしいと、お前はこの場から離れろと言うと同時に男が兄に襲いかかった。 「兄ちゃん!!」 「逃げろ!!早く……逃げろ!!」 男は兄の首に食らいつき血を啜っていた。 あまりの恐怖で動けず兄が力なく倒れる様子をただ見ていた。 そして男は今度は自分の方へ向かってくる。 その時だった。 「止まれ吸血鬼。」 「!?」 男の後ろに若い男がいた。 そしてその男性は男の心臓に短剣を突き刺した。 「死ね。」 心臓を刺され抉り取られた男は悲鳴を上げ塵と化した。 何が起きたのか分からずただただ震えていた。 男性は震える自分をそっと抱き寄せる。 どうして兄が死んだ?一体何が起こった? まだ兄と仲直りしてないのに……… 後に聞かされた吸血鬼の存在。 それを知った彼は兄を奪った吸血鬼全員滅ぼしてやるのだと復讐を誓う。 「よう帳。」 「………何故お前がここにいる八尋。」 彼、日向八尋(ひゅうがやひろ)は兄を吸血鬼に殺され十字協会が運営する施設の教会に引き取られた。 そこは八尋同様吸血鬼に親を殺された子供が多数いる。 しかしその教会は吸血鬼にトラウマを抱いた子も多い為協会からは大分離れた場所にあるがなぜか八尋が協会にやって来たのだ。 「俺ももうすぐ高校生だぞ。 アンタん家から高校に通うんだ当然だろ? 荷物もそっち移そうと思うんだけど。」 「………待て。 私は何も聞いていないぞ!?」 「?だって会長さんがアンタんとこ行けって。」 「………あの糞ジジイ。 耄碌して伝えるべき事も覚えてないのか…… 八尋、悪いが脚下だ。 こちらにも都合がある。 寮なり近くの家借りるなりしろ。」 「無理だって。 もう明日引っ越す準備してんだから。」 「……………」 帳は吸血鬼に襲われていた八尋を助けた。 そして吸血鬼に復讐したいと訴える八尋に色々と世話を妬いて仕込んできた。 だがまさか八尋が家にくるなど寝耳に水の帳は眉間に皺が寄る。 会長が帳に伝え忘れていたのだろうが迷惑極まりない老害だと帳は呆れる。 それに家には今年から高校生になる浬がいる。 しかもなんだ?家の近くの高校だと? 嫌な予感しかしない………

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