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第11話
浬が半吸血鬼だと言ったところ八尋の表情が曇っていった。
そんな八尋の様子に浬は申し訳なさそうに下を向く。
「は?どう言うことだよ。
なんで吸血鬼が帳の家にいる?」
「浬は半分は人だ。
それに人を襲いはしない。
そんなあからさまに嫌悪感を出すな。」
「ふざけんな!!吸血鬼なんかと一緒に暮らせるか!?」
帳の予想通り八尋は浬に対して嫌悪感を露にする。
しかしいくら八尋が吸血鬼に憎しみを抱いていたとしても浬へ当たる事はただの逆恨みで見過ごすことはできない。
浬はと言うと八尋の逆恨みでも何かを言い返すことは無い。
浬とはそう言う子だ。
自分が悪くなくてもお前が悪いと言われれば否定しない。
だからこそ厄介だと帳は頭を抱える。
「八尋、浬が居ることが不満なら出ていけ。
第一私は会長の言うこととはいえお前がここに住むことを許可した覚えはない。」
「___っ!!
なんで………吸血鬼の味方をする?」
「私は浬を吸血鬼として接しているのではない。
浬と言う一人の人格を見ているんだ。」
帳は浬が悪い奴ではないと分かっている。
寂しがり屋で甘えん坊。
けれど辛い思いもしてきたからこそ自分の気持ちを押し殺してでも誰かに優しく出来る。
健気でいい子なのだ。
「どうする八尋?」
「…………分かったよ。」
渋々納得するも八尋は浬には目もくれず横を通り過ぎ帳に自分の部屋はどこかと訊ねる。
素通りされた浬はただ八尋を見つめていた。
「はぁ……全く会長のせいでめちゃくちゃだ。」
帳は原因を作った会長に多少の殺意を覚えた。
昨夜八尋が家に来ると聞いて帳は会長の元へ飛んでいった。
何故浬がいると言うのに八尋が自分の家に来ることになったのか説明を求めると呆れる答えが返ってきた。
「ああ、あの子供のことか……
お前があまりここに寄らないから伝えるのを忘れていた。
まぁ、八尋はお前を好いておるようだからな。
丁度よかろう?」
「……………」
結局のところ帳に八尋を戦闘で使えるようにしろと言うことなのだろう。
確かに圧倒的な吸血鬼の力に対抗するにはかなりの戦闘能力がいる。
八尋にはその素質がある。
だからこそ帳も彼に色々教えて来た。
しかしまさかここまで世話を押し付けられるとは誤算だった。
浬と上手くやれそうにないとなると帳の負担も大きい。
彼はそれが憂鬱で仕方がなかった。
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