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第12話

八尋が帳の家に来た。 浬は少しでも八尋に近づきたいと彼に話しかけようとするも避けられる。 まるで浬の存在を自分の前から消そうとするかのように。 八尋はここに浬がいることを未だに納得していないけれど受け入れなければ帳に追い出される。 しかし浬と接すれば、吸血鬼を憎む自分は彼をどうにかしてしまいそうだった。 だがそれならば帳にも吸血鬼の血が混じっているのはどうなのか? 帳は協会の一員で今までに多くの吸血鬼を殺してきた。 それに自分の命の恩人だ。 しかし浬は協会の者ではないし何より帳が自分の知らない奴を家に居させている事が気に入らなかった。 しかもそれが自分の最も憎む吸血鬼なのだから。 「あ、あの……ご飯出来た………」 まだ学校が始まる前で帳は仕事。 必然的に昼は八尋と浬は二人きりになる。 浬は昼食を作り八尋を呼びに彼の部屋に行くが返事はない。 「あの………」 「いらない、コンビニで買ってくる。」 「そう………」 八尋はそう言うと部屋を出てコンビニに昼食を買いにいった。 浬は昼食を二人分作ったが八尋がいらないと言うから仕方なく八尋の分を捨てることにした。 どうすれば彼と仲良くなれるのか考えても全然答えはでない。 二人の関係が縮まる事もなく高校へ進学した。 そして不運な事に八尋とは同じクラスになった。 そんな二人のクラスの女子はざわついていた。 何故なら目鼻立ちくっきりしていてキリッとした目の男らしい八尋と吸血鬼は皆容姿端麗故、その血を受け継いでいて大きな目が特徴の中性的な浬と言うイケメン二人がいるのだ。 女の子は放っておかない。 当然声をかけてくる。 「ねぇ聖城君。」 「な、何?」 「聖城君ってほんと綺麗な顔してるよね~ 彼女とかいるの?」 「え……いないけど……」 「そうなの!!じゃあ私立候補しようかな~」 「え?えっと………」 こう言うノリが苦手な浬はどうすればいいのか分からずたじたじになる。 中学の頃からよく女の子に可愛い可愛いと言われて来たが浬にとってはそれまで藜以外とあまり接したことはなく女性に至ってはほぼ初めてと言っていいほど接したことがなく女の子に囲まれて質問攻めに合いトラウマになっていた。 そして高校でもそれは変わらずどっと疲労感が出た。 一方八尋は慣れてるのかちゃんと女の子の相手をして聞かれたくないことは適当に受け流してる。 それを見て凄いなぁと感心していると八尋が浬の視線に気づき嫌な顔をするとトイレと言って席を立ち浬の後ろを通過する。 その際八尋は浬にチッと舌打ちをした。 「…………っ」 思っているより自分を嫌っているようで浬はズキッと胸が痛んだ。 どうすれば仲良くなれるのかと考えていたがここまで嫌われていると流石の浬も辛くなる。

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