放課後八尋が帰ろうと席を立つ。 既に友達が出来たようで女の子の他にも男子ともじゃあなと挨拶をして教室を出る。 それを見て浬も教室を出て八尋のあとを追った。 ｢や、八尋待って。｣ 靴箱の所で追い付き八尋を呼び止める。 するとずっと無視だったのがようやく自分を見てくれた。 それが意外で浬は嬉しかった。 ｢……何？｣ ｢あ、あの…一緒に帰ろうと思って……｣ ｢なんで？｣ ｢え？だって同じ家だし。｣ ｢おいお前、誰かに一緒の家に住んでるとか言うなよ？面倒だ。｣ ｢……分かった。｣ そう言うと八尋はさっさと行ってしまった。 やはりそう簡単に距離は縮まらない。 結局別々に家に帰って家の中でも一言も会話はなかった。 夕飯も八尋は自分で勝手に作って食べるようになっていた。 浬が作るのは自分と帳の分だけ。 帳も二人が上手くいっていないのは分かっていたが仕事も忙しく特に八尋が浬に危害を加える事はないし彼には浬を傷つけるなときつく言っているし浬にも八尋とは関わらなくていいと言ってある。 けれど繊細な浬は帳が八尋とは関わらなくていいと言っても同じ屋根の下に暮らしているのに干渉しないのは嫌だった。 だからなるべく八尋に声をかけているがいつも無視されるかそっけない言葉が返ってくるのみだ。 ｢八尋……｣ ｢なぁ思ったんだけどさ、お前いっつも帳の部屋で寝てるよな。 何なの？そう言う関係？｣ ｢？？何のこと？ 俺はただ帳とじゃないと眠れないから。｣ ｢何だよそれガキか。 小学生じゃあるまいし一人で寝ればいいじゃん 気持ち悪い。｣ ｢………っ｣ 確かにそうだ。 高校生にもなって一人じゃ眠れないと言うのもおかしい。 その日の夜、就寝の時間。 この日は帳に血を貰う日だった。 いつものように帳のベッドで寝る前に血を吸う 浬は帳の首に牙を突き立てるがふと、血を吸うのを躊躇った。 ｢どうした浬？｣ ｢…………ううん。｣ 自分の吸血の光景は八尋が見たらどう思うのだろうかと、きっと化け物だと嫌悪するのだろと考え吸血鬼である自分が醜く感じた。 けれど血を貰わねば本当に理性の無い化け物になってしまう。 それだけは絶対に嫌だからと再び帳の首にプツリと牙を立てる。 そして帳から血を貰った後浬は自分の部屋で寝ると言ったのだ。 ｢浬……？今日はお前おかしいぞ。 もしかして八尋に何か言われたか？｣ ｢……っ、違うよ だってもう高校生だよ？流石に俺も自立しないと。｣ 帳の言ったことは図星だ。 けれど八尋は何も悪くない。 浬は帳に笑みを向け自分の部屋へ戻った。