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第14話
浬は最近眠れない日々が続いていた。
理由は分かっている。
帳と離れて寝ているからだ。
一人じゃ寝られないくせに八尋の小学生じゃあるまいし一人で寝ればいいじゃんと言う言葉にムキになった。
自分の部屋で寝る努力をしているがやはり一人は怖くて寂しくて中々寝付けなかった。
そんな日が続くと心身ともにきつくなる。
この日は日曜日。
休日とは言え帳は仕事で家には八尋と二人きり。
浬はリビングで本を読み八尋はキッチンで昼食を作っていた。
二人会話もなく気まずい雰囲気が続く。
そんなとき。
「いたっ……」
八尋が包丁で指を切ったようだ。
すぐに浬は臭いで気づいた。
案外深く切ったようで血の臭いが濃くなり浬をおかしくさせる。
普段ならこれくらい帳から血を貰っていればなんともないのだが最近は寝不足で疲労が溜まったいた事が災いし血が欲しいという欲求が押し寄せてくる。
「……ヤッベ、絆創膏とか何処だ?」
八尋が血を流しながら絆創膏を探す。
このだだっ広い邸、浬も救急箱なんて使わないから何処にあるかなんて知らない。
そして八尋が浬の傍までやって来た。
彼の指から流れる赤い液体。
美味しそう………
そう思うと同時に浬は立ち上がり八尋の前に立つ。
「何?」
八尋が振り返ると浬は八尋の血の伝う指を舐めとった。
「……つ!!
おい、何しやがる!!」
指を舐める浬は目を赤く光らせ八尋を見る。
その様が何時の日かの兄を襲った吸血鬼のようでぞくっと震える。
怖くて憎くて、そんな感情が蘇り今にも殺してやりたいと憎悪が八尋の心を支配する。
しかし浬の顔は驚くほど綺麗で、その妖艶な容姿に見入ってしまう。
それもそのはず。
吸血鬼は獲物である人間に逃げられないように
美しい姿で虜にさせ惑わせる。
八尋もその吸血鬼の術中にはまってしまったのだ。
怪我をした指を舐め上目使いで八尋を見る。
その一つ一つの行動がとても美しく思わず息を飲む。
浬の舐めた八尋の指はすっかり血が止まってしまった。
そこで浬はもっとと血を欲し八尋の首へてを伸ばす。
しかしここで理性を取り戻し伸ばした手を引っ込める。
「あ………ごめ…なさ……
ごめん…なさい……八尋……」
「……………っ」
浬は不可抗力とは言え八尋の血を舐めてしまった事に酷く後悔と罪悪の念を感じ後退る。
そして何度も何度も謝罪の言葉を繰り返し涙を流す。
「おい……」
「ごめんなさい!!」
近づいてくる八尋に浬は堪らずその場を立ち去って家を出た。
兎に角遠くに誰もいない森へと走った。
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