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第15話
「はぁ……はぁ……」
八尋の血を飲んでしまった。
彼は吸血鬼を憎んでいるのに一番してはいけない行為をしてしまったのだ。
その罪悪の念から浬は家を飛び出し森へと逃げた。
暫く走って家から大分離れたところで足を止めた。
どう八尋に詫びればいいのか。
浬はうずくまって涙を流し泣いた。
もう家に帰れないと、帳との人を襲わないと言う約束を破ってしまったと浬は泣いた。
「そんなに泣いて余計にお腹すくよ。」
「!?」
突然知らない声が上の方から聞こえた。
辺りを見渡すと木の上に男性が座っていてその男はスッと木から飛び降りてきた。
酷く整った顔立ちで吸い込まれそうな程真っ黒な瞳が印象的の彼は浬の傍まで来るとニッコリと笑った。
「あの……貴方は……」
「俺はルシェル・クロー。
君もよく知ってるものの一人だよ。」
よく知るもの、それはつまり
「吸血鬼?」
「そ、吸血鬼。
にしても君、酷い顔だな~
それに血の臭いがする、血飲んだの?
まだ足りないって様子だけど。」
「!!」
彼の言う通りだ。
八尋の血を中途半端な量を飲んでしまい余計に血が欲しくてたまらない。
こんなところまで来てしまったのもあそこにいたら八尋を傷付けてしまいそうだったから……
だけど暫くこの渇きは治まりそうにない。
「ねぇ、なんでそんな顔して泣いてんの?」
「………俺は」
浬は自分が同居する八尋の血を飲んでしまったことを彼に伝えた。
人を襲わないと約束したのに理性を押さえられなかった罪悪感に苛まれている事を。
「ふ~ん、そう………
ねぇ、血が欲しい?」
「………っ」
欲しい、本当はルシェルを襲ってしまいたいくらいに……
けれど彼は吸血鬼。
人を餌としか思ってない上に浬たち半吸血鬼を嫌う生き物だ。
ここで欲しいと言ったら何をされるのか分からない。
「ふふっ強情な子だ。
素直に欲しいと言えばいいのに。
ほら、飲みなよ。」
ルシェルはそう言うと自らの腕を噛み血を流す
そしてそこに自ら口を付け血を口に含む。
そしてルシェルは浬の目線にしゃがみ顎をクイっと上げ彼に口付け血を口移しした。
「………っ!!
ん……ふっ………」
いきなりの事で頭が真っ白になる。
だって吸血鬼が見下す人の子に血を分け与えるのだから……
ルシェルに口移しされ血の味が口いっぱいに広がる。
浬は押し流される彼の血をゴクリと飲み干した。
「な…んで………」
「ん?だって君可愛いから。
俺、君に興味があるんだ。」
ニッコリと微笑むルシェルの真意がよく分からない。
何か企んでいるのではないかと疑ってしまう。
その浬の心を知ってか知らずかルシェルはもっと欲しいなら飲みなよと浬の頭を自分の首へ誘導する。
「大丈夫、何もしやしないよ。
可愛い君に血をあげたいだけ。」
耳元で囁くように言われぞくりとする。
浬は彼の言う通りに首を牙で噛み血を飲んだ。
彼の血は人とは違いとても美味しい。
それが吸血鬼だからなのかは分からないが、藜とも帳ともましてや八尋とも違ってとても濃いものだった。
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