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第16話
ルシェルの血を飲んだあと寝不足なのと疲労で眠ってしまった。
ルシェルは木に寄りかかり浬を膝枕で寝かし髪を梳くように頭を撫でる。
「どうしよう……この子可愛いな。
帰したくなくなっちゃう。」
独り言を言うがその言葉は誰にも届いてはいない。
ルシェルは浬に対して興味を持った。
純粋で真っ白な半吸血鬼の子供。
真っ白すぎて逆に興味が湧く。
怪我した人間の血を少し舐めただけでこんなにも悩んでいる。
自分には分からない感情だ。
「お~いそろそろ起きよっか。」
「ん……」
陽も大分落ちてきて暗くなってきた。
そろそろ帰さないといけない時間だろうとルシェルは浬を起こした。
「もう暗くなってきたし帰った方がいいんじゃない?」
「………帰れない。」
「大丈夫。
無理だと思えばまたここに来ればいい。
俺はいつでもここで待ってるから。」
浬はまだ八尋の事を気にして帰ることができないでいるが、ルシェルの説得に渋々納得し家に帰った。
家に着く頃には帳がもう戻ってきていた。
八尋は自分の部屋に居るらしい。
帳は八尋の事は何も聞いては来ない。
もしかして八尋は何も言っていないのだろうか?
浬は恐る恐る帳に話しかけた。
「帳、あの………」
「随分遅かったな、何処に行っていたんだ?」
帳は浬の方を見ないでパソコンで作業をしながら聞いてくる。
「あの……俺八尋に………」
言葉に詰まり黙っていると帳は作業を止め浬の方に目を向けた。
そして浬の頬に手を伸ばした。
「帳………?」
「八尋から話しは聞いた。」
「じゃあ、俺罰を受けないといけない。
ごめんなさい……俺、帳との約束破った。
八尋に酷いこと……した。」
きっと八尋にとって血を吸われるのは一番嫌な行為のはず。
浬は八尋に酷いことをしたのだと泣く。
「………はぁ、全くお前は。
確かにお前は最近調子が良くないようだ。
理性を保てず血を求めたのだろう。
それは体調管理の出来ていなかったお前に非がある。
けれど怪我した八尋がお前が吸血鬼と知っていて傍に行ったことにも非がある。
それ以上にお前たちを二人きりにした私に責任がある、すまなかった。」
「とばり………」
帳は浬をぎゅっと抱き締めもう一度すまなかったと謝罪の言葉を口にする。
帳は浬にも非があると言いながらもそれ以上は咎めはしなかった。
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