17 / 135
第17話
夕飯は帳と浬、二人で食べた。
八尋は部屋から出てきてはくれなかった為帳が部屋まで持っていった。
そんな八尋は部屋のベッドで横になり昼間の事が頭から離れないでいた。
赤く染まった瞳に美しい顔で妖艶に血を舐める姿に感じたゾクリとする感覚は何なのだろうか?
恐怖……?それもあると思うが何か違う。
兄を殺した吸血鬼と決定的に違うもの……
あの時の吸血鬼は帳が言うには下位の吸血鬼だと言っていた。
吸血鬼には位がある。
ピラミッド型に下位、中位、上位とランク分けがある。
下位の吸血鬼はそれほど強くなく立場も弱い。
なぜなら先祖が元人間だったものが含まれているから。
故に上の位の吸血鬼の餌にされやすく彼らは人を餌にするものが多い。
中位は元人間の血は含まれず吸血鬼のすべての始まりである始祖の末裔の純血。
だがどの始祖を先祖に持つかで派閥も出来ている。
そして自分たちより力が上の上位の吸血鬼へ媚諂いあわよくば彼らへ取り込もうとする。
そして最も能力が優れている上位は一つの一族が全てを占めていて中位と同じように始祖が存在しているのだが、その始祖は一緒に存在した他の始祖の吸血鬼の中でも特別で群を抜いて能力 が強く、その始祖の子孫である上位の吸血鬼に敵うものはいない異質な存在なのだ。
多分浬の親は下位の吸血鬼ではない。
あの感じは下位の吸血鬼には無い何かを感じたから。
しかし、八尋は浬に感じる"何か"がどうしても引っ掛かっていた。
「クソッ何なんだよあいつ!!」
結局八尋は夕飯には手を付けなかった。
仕方なく食事を処分する浬。
帳は風呂から上がりリビングへとやって来た。
浬は帳がリビングに来たのを確認しおやすみと自分の部屋へ行こうとする。
「待て浬、私の部屋で寝なさい。」
「え、でも………」
「八尋に言われたからなのだろうが、それで眠れなくて体調管理出来ないのなら意味がない。
私の部屋で寝なさい、私もお前がいないのは少々物寂しい。」
微笑する帳に浬はきっと自分に気を使っての発言だろうが
一緒に寝れるのは嬉しいとうんと頷いた。
「ありがとう、帳。」
お礼を言って帳の部屋へ行く。
このベッドは帳の臭いと温もりが染み付いていてとても落ち着く。
きっと八尋はあまりいい気はしないだろうがここでないと眠れないのだからしかたない。
いつか八尋と仲良くなりたい。
時間が立てばそのうち仲良くなれると浬は信じて待つことにした。
あっと言う間に眠気が襲ってきて今までの眠れなかった日々が嘘のようだ。
帳が残りの仕事を終え部屋に来る頃には浬は寝息を立て眠っていた。
「ふっ……仕方の無い子だ。」
帳は自らもベッドに入り浬が寝返りを打ってはだけた布団をかけ直した。
そしてぐっすりと眠っている浬を撫でながら見つめ呟く。
「それにしても一体誰の血を飲んだ?」
八尋でも無い誰かの血の臭いを帳は感じ取った。
人側にいるとは言え帳も吸血鬼の血が混ざっている。
その為血に対しては敏感だ。
きっと浬は誰に会ったのか言うことはないだろうとあえて聞かなかったがその血が人の血で無いことは気配で分かる。
何か嫌な予感がする。
帳はそう思った。
ともだちにシェアしよう!