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第23話

夜寝静まる頃浬は中々眠れないでいた 帳は自分がここにいていいのだと 八尋の事はもう少しだけ待っててやれと言った けれど浬の心は落ち着かない 眠れない浬は起き上がり帳が熟睡しているのを確認して外に出た 外で少し風に当たり気持ちを落ち着かせたかった ふと以前ルシェルと出逢った森へ行ってみる きっとルシェルはいないだろうけどほんの少し彼がいるのではと言う淡い期待をして そしてルシェルと出逢った場所へ来てみて辺りを見渡してみるが姿は見えない そりゃそうだ こんな遅い時間に今いるとは到底思えない それにたった一度だけ会っただけなのだから 浬は大きな溜め息を一つつき帰ろうと靴を翻す すると 「もう帰るの?」 「!?」 浬の後ろからいきなり抱き締められる そして囁かれた聞き覚えのある声 後ろを振り替えるとルシェルの綺麗な顔が浬のすぐ横にあった 「ルシェル!! どうしてここに………?」 「言っただろう?ずっと待ってるって」 「えっと………ずっと待ってたの?」 「そうだよ」 本当に待っててくれるんだと親しい者が少ない浬は凄く嬉しかった そして浬はルシェルにこんな時間にこんなところで一人で何しているのか問われどう答えればよいのか迷い黙りこんでしまった 「君は何か不安?」 「俺…は……… ここにいてもいいのかなって……」 帳の家にこのままいても迷惑なだけだと ルシェルに胸の内を話した 「じゃあそこに居づらいなら俺とおいでよ 俺は大歓迎だよ?君可愛いし」 ルシェルの思っても見ない誘いに浬は驚いた けれどルシェルに自分がいてなんのメリットがあるのだろうか? 餌として傍に置いておきたいのか? しかしそれも疑問だ だってルシェルは浬に自らの血を与えた 餌に吸血鬼は自分の血を与えたりなどしない 彼の真意が分からない 「えっと………」 「まぁ焦んなくていいよ もう少し考えればいい 吸血鬼の寿命は限り無いのだから待つのは慣れてる」 ルシェルはそう言ってにっこりと笑う 彼は何処まで本気で笑顔に隠された心の奥底が一体どんなものなのか全く見えない

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